著作権回復への異議
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 00:57 UTC 版)
「ウルグアイ・ラウンド協定法」の記事における「著作権回復への異議」の解説
ウルグアイ・ラウンド協定法による遡及的な著作権回復は、アメリカ合衆国憲法違反として2件の訴訟において争われた。 ゴラン対ゴンザレス事件(Golan v. Gonzales)では、著作権延長法とウルグアイ・ラウンド協定法の著作権回復条項の双方が、アメリカ合衆国憲法の著作権・特許権条項(第1編第8条第8項)違反として争われた。同条項は、連邦議会に対して、「著作者および発明者にそれぞれの著述および発見に対する排他的な権利を有限の時間について確保ことにより、科学および有用な技芸の進歩を促進する」(強調を追加)権限を付与するものである。原告らは、ウルグアイ・ラウンド協定法は、著作物をパブリック・ドメインから取り除いて再び著作権を付与することから、著作権期間の「有限性」に反すると主張し、さらに、このことは科学および有用な技芸の進歩を促進しない、とも主張した。そのうえ、原告らはウルグアイ・ラウンド協定法は修正第1条と修正第5条に反するとも主張した。これらの異議はコロラド地区連邦裁判所により退けられたが、これに対して合衆国第10巡回区控訴裁判所への控訴がなされた結果、修正第1条との関係の合憲性についてはその見直しを求めて同地裁に差し戻された。2009年4月3日に差戻事件であるゴラン対ホルダー事件(Golan v. Holder)において、コロラド地区連邦裁判所のルイス・バブコック裁判官は、ウルグアイ・ラウンド協定法は修正第1条に違反するとの見解を示した。同裁判所は、ウルグアイ・ラウンド協定法の第514条が政府利益の達成に必要な範囲よりも実質的に広い、との判断を示したのである。すなわち、パブリックドメインにある一定の著作物について著作権を回復し、当該回復から1年後には利用料の支払を求め派生著作物を制限することにより、連邦議会は、憲法上の権限を踏み越え、当該著作物の依拠当事者の修正第1条上の権利の完全な保護を怠ったものとしたのである。 2011年3月7日、合衆国最高裁判所はゴランの申立てを受けて事件移送命令(certiorari)を発し、この事件を審理することとした。2012年1月18日、最高裁は6対2でウルグアイ・ラウンド協定法の合憲性を認めた。多数意見を書いたのはギンズバーグ判事であり、反対意見を書いたのはブライアー判事であった。 2つ目の訴訟、ラックズ・ミュージック・ライブラリー・インコーポレイテッド対ゴンザレス事件(Luck's Music Library, Inc. v. Gonzales)では、著作権・特許権条項のみが争われたが、これは退けられた。
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