色覚の恒常性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 09:56 UTC 版)
人間が光線の波長そのものを知覚しているのではなく三種類の錐体の出力比を知覚していることを述べた。これだけでは例えば、極端に黄色い照明の下では全てのものが黄色く見えてしまうはずだが、実際には色味のある照明の下でもその照明に支配されない認識が得られる。これを色覚の恒常性という。 人間の視覚には慣れや知識などによる補正があり、多少の光源の色度の違いは補正される。このため昼と夕方とでは日光の波長分布が違うにもかかわらず、物体は同じ色に見える。太陽光と異なる波長分布を持つ照明下でも「白色」のものは白色と感じられる。例えば、「白熱灯」の波長分布はその名に反してかなり赤に偏っているが、その照明下でも白い紙は白く見える。周囲の色々なものの見え方からそのときの照明条件を推定し、その推定に従って色の見え方を補正していると考えられる。 太陽光と同じ波長分布の光が最も自然な白色とされるが、それより青成分の強い光を「爽やかな白」と感じる人が多い。故に多くのディスプレイ上に表現される白色は純白より青味が強い色になっている。そのような青味の白も極端でなければ、日常的に白を吟味していないような多くの人の眼には「青」でなく「爽やかな白」と感じられる。 夜間など十分な光の得られない環境では、錐体の機能が低下する。暗所で働く桿体は錐体と比較して赤色光への感度が低いため夜間には赤と黒の識別が困難になるのだが、そのような環境にあっても赤色であると知っているものは赤く見える場合がある。例えば、黒く塗った林檎を暗い環境下で見せると赤く見える、といったことが起こる。 太陽光線の波長分布は季節や時刻によって異なる。また、周囲に反射した光によっても影響される。例えば周りが青い物ばかりならば反射光によって環境光は青さが増す。だが、周囲の色に引きずられて物の色が違って見えては困るであろう。色の恒常性は、そのような場合でも出来るだけ一定の色覚を保つために発達したとの考えは、ある自然さを持っている。ただし、この補正にも限度があり、極端に偏った波長分布では補正しきれない。
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