舌背音
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舌背音(ぜっぱいおん、英語: dorsal consonants)は舌端と舌根を除く舌の広い面部分によって調音される子音。舌面音(ぜつめんおん)ともいう。自然な口の構えで硬口蓋に面している部分を前舌面(まえじためん・ぜんぜつめん)、軟口蓋に面している部分を奥舌面(おくじためん)または後舌面(こうぜつめん)という。母音の分類に使われる前舌・後舌と混同しないように注意。また前舌面とはいっても舌尖・舌端よりは後ろであり、舌全体ではかなり中間に位置する。
- 1 舌背音とは
- 2 舌背音の概要
舌背音
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「インド・ヨーロッパ祖語の音韻」の記事における「舌背音」の解説
(詳細は「ケントゥム語とサテム語」を参照) 伝統的な再構によれば、カール・ブルークマンの『印欧語比較文法の基礎(英語版)』で示されたもののように三系列の軟口蓋音がPIEに再構される。 「口蓋化軟口蓋音」(単純に「口蓋化音」とも)*ḱ, *ǵ, *ǵʰ (*k', *g', *g'ʰ / *k̑, *g̑, *g̑ʰ / *k̂, *ĝ, *ĝʰ のようにも書かれる) 「平軟口蓋音(plain velars、定訳を知らない)」(「純粋軟口蓋音(pure velars、定訳を知らない)」とも)*k, *g, *g 両唇軟口蓋音*kʷ, *gʷ, *gʷʰ (*ku̯, *gu̯, *gu̯hのようにも書かれる)⟨ʷ⟩および⟨u̯⟩は軟口蓋での調音に唇音化が加わっていることを示す。 これらの三つの実際の発音はよく分からない。ある近年の説は、「口蓋化軟口蓋音」は実際にはただの軟口蓋音(*[k], *[g], *[ɡʱ])であり、一方で「平軟口蓋音」は口蓋垂音(*[q], *[ɢ], *[ɢʱ])あたりの更に後ろで発音されていたと主張する。もし両唇軟口蓋音が単に「平軟口蓋音」が両唇化したものであったとしたら、これらは*[qʷ], *[ɢʷ], *[ɢʷʱ]と発音されたはずだが、仮にサテム諸語が第一に口蓋化軟口蓋音を推移させてから両唇軟口蓋音と平軟口蓋音が合流したとすれば、両唇軟口蓋音が*[kʷ], *[ɡʷ], *[ɡʷʱ]であったとするのは口蓋垂説(uvular theory)においてもかんがえうる。 もうひとつの説は、PIEに軟口蓋音は二系列(平音と唇軟口蓋音)しかなく、口蓋化軟口蓋音はサテム諸語での独自の変化であるというものである。 サテム諸語では口蓋化軟口蓋音(*ḱ, *ǵ, *ǵʰ)がそれぞれの言語で多様な破擦音、もしくは歯擦音になるのと同時に両唇軟口蓋音(*kʷ, *gʷ, *gʷʰ)と平軟口蓋音(*k, *g, *gʰ)が合流するが、一部の音韻論的環境で非口蓋化が発生し、ケントゥム語の写映形がサテム語に見られることをもたらす。例えば、バルト・スラヴ語派とアルバニア語派では(後者は前舌母音が続かなければ)口蓋化軟口蓋音が共鳴音の前で非口蓋化される。サテム諸語においては一般的に平軟口蓋音と両唇軟口蓋音の写映形を区別することができないが、後続母音のu音化などによって、唇音化を喪失した痕跡を持つ単語がある。ケントゥム諸語はそれに対して口蓋化軟口蓋音が平軟口蓋音と合流する一方で両唇軟口蓋音の区別が保存されている。boukólos規則(英語版)として知られる音韻法則によればサテム諸語における非口蓋化と相似しケントゥム諸語は両唇軟口蓋音が *w(もしくはその異音 *u)に隣接したときに非唇音化を見せる。
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舌背音
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「インド・ヨーロッパ祖語」の記事における「舌背音」の解説
印欧祖語の舌背音として、軟口蓋硬口蓋化音、軟口蓋音、軟口蓋円唇化音の3系統が再建されている。これはケントゥム語派とサテム語派の比較により発見された。 軟口蓋硬口蓋化音(ḱ、ǵ、ǵʰの3種。「k'、g'、g'ʰ」、「k̑、g̑、g̑ʰ」、「k、ĝ、ĝʰ」とも表記される)は、口蓋化した軟口蓋閉鎖音([kʲ]、[gʲ])と推定され、サテム語派では摩擦音となっている。 軟口蓋音(k、g、gʰ) 軟口蓋円唇化音(kʷ、gʷ、gʷʰ。「ku̯、gu̯、gu̯h」とも)。 上付きのʷは、円唇化、つまり軟口蓋閉鎖音を調音する際に唇を丸めることを示している([kʷ]は、英語のqueenのquの部分に見られる音に似た音である)。ケントゥム語派では軟口蓋硬口蓋化音が軟口蓋音に同化したのに対し、サテム語派では軟口蓋円唇化音が軟口蓋音に同化した。 普通の軟口蓋音(k、g、gʰ)と口蓋化音や円唇化音との関係について、この普通の軟口蓋音が他の2種の軟口蓋音からいつ独立した音素となったかが議論の的となっている。ある音声的条件下では前者は後者に中和するため、結果ほとんどの場合で普通の軟口蓋音は異音として出現するのである。この異音化がいつ起こるのかは正確には特定されていないが、sまたはuの後、もしくはrの前で中和が起こることが広く認められている。さて、印欧語学者の多数は崩壊期直前には既に3つの軟口蓋音の系統が認められていたとするが、一方コルトラントを含む少数学派は、普通の軟口蓋音はサテム語派の分岐後、その一部から発展したとしている。これは1894年、アントワーヌ・メイエにより唱えられた説である。 印欧祖語の時点で既に3系統の軟口蓋音が弁別されていたとする説の証拠としては、アルバニア語とアルメニア語、ルウィ語がしばしば言及される。アルメニア語とアルバニア語では普通の軟口蓋音が軟口蓋円唇化音と一定状況下では弁別され、またルウィ語には3系統の軟口蓋音が反映されたとみられる3種類の音素z(<*ḱ、おそらく[ts])、k(<*k)、ku(<*kʷ、おそらく[kʷ])が存在するのである。しかし、一方コルトラントはこの証拠の重要性に疑問を呈している。()普通の軟口蓋音が単独の音素となった時期については、音素分析された種々の異音が本来どのように分布していたかが類推展開では不明瞭になるうえ、またこの問題に確固とした結論を出せるほど直近の事例ではなく、また証拠も十分に存在しない。そのため、この論争が終局的に解決する見込みはない。
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