舌背音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/29 06:10 UTC 版)
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舌背音(ぜっぱいおん、英語: dorsal consonants)は舌端と舌根を除く舌の広い面部分によって調音される子音。舌面音(ぜつめんおん)ともいう。自然な口の構えで硬口蓋に面している部分を前舌面(まえじためん・ぜんぜつめん)、軟口蓋に面している部分を奥舌面(おくじためん)または後舌面(こうぜつめん)という。母音の分類に使われる前舌・後舌と混同しないようにしなければならない。また前舌面とはいっても舌尖・舌端よりは後ろであり、舌全体ではかなり中間に位置する。
調音範囲としては硬口蓋音・軟口蓋音・口蓋垂音・口蓋摩擦音がある。
各国語における例
IPA発音記号 | 子音名 | 言語 | 単語例 | IPA表記 |
---|---|---|---|---|
⟨ɲ⟩ | 硬口蓋鼻音 | アルバニア語 | një | [ɲə] |
⟨ʝ⟩ | 有声硬口蓋摩擦音 | 現代ギリシャ語 | για | [ʝa] |
⟨ç⟩ | 無声硬口蓋摩擦音 | ドイツ語 | Reich | [ʁaɪ̯ç] |
⟨j⟩ | 硬口蓋接近音 | 英語 | yellow | [ˈjɛloʊ] |
⟨ŋ⟩ | 軟口蓋鼻音 | sing | [ˈsɪŋ] | |
⟨ɡ⟩ | 有声軟口蓋破裂音 | garden | [ˈɡɑː(ɹ)dn̩] | |
⟨k⟩ | 無声軟口蓋破裂音 | 英語 | cake | [ˈkeɪk] |
⟨ɣ⟩ | 有声軟口蓋摩擦音 | 現代ギリシャ語 | góma (γόμα) | [ˈɣoma] |
⟨x⟩ | 無声軟口蓋摩擦音 | マレー語 | akhir | [aːˈxir] |
⟨ʍ⟩ | 無声両唇軟口蓋摩擦音 | 英語 | whine | [ˈʍaɪn] |
⟨w⟩ | 有声両唇軟口蓋接近音 | water | [ˈwɔːtə(ɹ)] | |
⟨q⟩ | 無声口蓋垂破裂音 | アラビア語 | Qurʾān (قرآن) | [qurʔaːn] |
⟨ɢ⟩ | 有声口蓋垂破裂音 | ペルシア語 | omQ (قم) | [ɢom] |
⟨ʁ⟩ | 有声口蓋垂摩擦音 | フランス語 | Paris | [paʁi] |
⟨χ⟩ | 無声口蓋垂摩擦音 | ドイツ語 | Bach | [baχ] |
関連項目
- 調音部位
- 音声学の記事索引
出典
- ピーター・ラディフォギッド、イアン・マディソン『ザ・サウンズ・オブ・ザ・ワールズ・ラングウィッジーズ』Oxford: Blackwell、1996年。ISBN 0-631-19814-8。
舌背音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/16 08:52 UTC 版)
「インド・ヨーロッパ祖語の音韻」の記事における「舌背音」の解説
(詳細は「ケントゥム語とサテム語」を参照) 伝統的な再構によれば、カール・ブルークマンの『印欧語比較文法の基礎(英語版)』で示されたもののように三系列の軟口蓋音がPIEに再構される。 「口蓋化軟口蓋音」(単純に「口蓋化音」とも)*ḱ, *ǵ, *ǵʰ (*k', *g', *g'ʰ / *k̑, *g̑, *g̑ʰ / *k̂, *ĝ, *ĝʰ のようにも書かれる) 「平軟口蓋音(plain velars、定訳を知らない)」(「純粋軟口蓋音(pure velars、定訳を知らない)」とも)*k, *g, *g 両唇軟口蓋音*kʷ, *gʷ, *gʷʰ (*ku̯, *gu̯, *gu̯hのようにも書かれる)⟨ʷ⟩および⟨u̯⟩は軟口蓋での調音に唇音化が加わっていることを示す。 これらの三つの実際の発音はよく分からない。ある近年の説は、「口蓋化軟口蓋音」は実際にはただの軟口蓋音(*[k], *[g], *[ɡʱ])であり、一方で「平軟口蓋音」は口蓋垂音(*[q], *[ɢ], *[ɢʱ])あたりの更に後ろで発音されていたと主張する。もし両唇軟口蓋音が単に「平軟口蓋音」が両唇化したものであったとしたら、これらは*[qʷ], *[ɢʷ], *[ɢʷʱ]と発音されたはずだが、仮にサテム諸語が第一に口蓋化軟口蓋音を推移させてから両唇軟口蓋音と平軟口蓋音が合流したとすれば、両唇軟口蓋音が*[kʷ], *[ɡʷ], *[ɡʷʱ]であったとするのは口蓋垂説(uvular theory)においてもかんがえうる。 もうひとつの説は、PIEに軟口蓋音は二系列(平音と唇軟口蓋音)しかなく、口蓋化軟口蓋音はサテム諸語での独自の変化であるというものである。 サテム諸語では口蓋化軟口蓋音(*ḱ, *ǵ, *ǵʰ)がそれぞれの言語で多様な破擦音、もしくは歯擦音になるのと同時に両唇軟口蓋音(*kʷ, *gʷ, *gʷʰ)と平軟口蓋音(*k, *g, *gʰ)が合流するが、一部の音韻論的環境で非口蓋化が発生し、ケントゥム語の写映形がサテム語に見られることをもたらす。例えば、バルト・スラヴ語派とアルバニア語派では(後者は前舌母音が続かなければ)口蓋化軟口蓋音が共鳴音の前で非口蓋化される。サテム諸語においては一般的に平軟口蓋音と両唇軟口蓋音の写映形を区別することができないが、後続母音のu音化などによって、唇音化を喪失した痕跡を持つ単語がある。ケントゥム諸語はそれに対して口蓋化軟口蓋音が平軟口蓋音と合流する一方で両唇軟口蓋音の区別が保存されている。boukólos規則(英語版)として知られる音韻法則によればサテム諸語における非口蓋化と相似しケントゥム諸語は両唇軟口蓋音が *w(もしくはその異音 *u)に隣接したときに非唇音化を見せる。
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