肉体的・心理的問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/14 03:02 UTC 版)
「ドイツ海軍小型戦闘部隊」の記事における「肉体的・心理的問題」の解説
小型戦闘装備の搭乗員はK乗員(K-Piloten)あるいは口語的に「船長」(Kapitäne)と呼ばれていた。運用試験や訓練の最中、小型戦闘装備の狭さは閉所恐怖症やパニック障害、不安障害など、K乗員らに深刻な心理上の問題を引き起こした。排便など生理的欲求の処理も大きな問題であった。K乗員は深刻な鼓腸および放屁に悩まされ、これを防ぐために様々な食事改善が試みられた。排泄は艇内に設置された箱に行い、浮上航行の際に投棄することとされていた。しかし、これも実際には難しく、特にゼーフントの乗員は浮上の際に流れ込んだ海水、ディーゼル蒸留残渣、漏出油、糞尿、吐瀉物などが交じり合ったものに腰まで浸かることさえあった。不衛生な艇内環境によって重病に陥るK乗員も少なくなかった。そのため、K乗員には肉体的・精神的な強さが求められ、厳しい訓練が課されることとなる。彼らの訓練は朝の10,000m走から始まり、白兵戦訓練、30km夜間行軍などが続いた。演習準備なども含めると、1日20時間以上の訓練が課されたこともあった:42/43。 こうした問題の対策として、D-IX(ドイツ語版)錠剤の支給が実験的に行われた。D-IXはオキシコドンとコカイン、メタンフェタミンを配合した軍用強壮剤である。これを使用した場合、K乗員は2日から3日間ほどは多幸感に満たされるが、その後は疲労困憊に陥ったという。また、数日間連続での作戦活動が予想されるゼーフント乗員にはペルフィチン(Pervitin)やイソファン(Isophan)として知られる純粋なメタンフェタミンの錠剤が支給されたが、これらの薬物は幻覚症状などを引き起こす危険性があった。ペルフィチン投与の実験は、1938年9月にベルリンの軍事医学学校にて90人の海軍将兵を被験者として行ったものが最初とされる。1944年にはスポーツ選手およびザクセンハウゼン強制収容所収容者にまで実験対象が拡大された。その結果、ペルフィチン投与は中枢神経系への障害を引き起こす可能性が高いと判断された。そして代替品としてショカコーラ(ドイツ語版)が提案され、またペルフィチンの投与については慎重に判断し、ごく少量ずつ処方することとされた。ショカコーラはカカオ52.5%とカフェイン0.2%を含むチョコレートである。第二次世界大戦中、覚せい剤は軍用強壮剤として広く投入されていた。東部戦線でも長距離を運転する軍用トラックの運転手のために覚せい剤の支給が行われた。また、アメリカやイギリスでも同種の薬物が支給されていたという:75:111。
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