耐震システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 17:11 UTC 版)
改良された西大橋一期線。予想される東海、東南海地震に備えるべく免振支承とダンパーおよびアップリフト防止ケーブルを新たに取り付けている。 3大橋でとりわけ特徴的なシステムが橋軸方向に対する主塔と橋桁の固定システムである。地震が発生した場合、水平に働く力が橋桁に大きく作用することで主塔に悪影響を及ぼすことから、水平力を低減するシステムとして採用されている。ただし、橋桁は金属製であるがゆえに温度によって伸縮することから(鉄道のレールが夏の暑さで伸びて曲がることと原理は同様)、仮に橋桁と主塔をピンで固定してしまうと、伸縮によって主塔に曲がる力が作用する。これが結果的に下部工に負担を及ぼすことでケーソン底面の地盤が影響を受けて沈下することが懸念された。特に西大橋付近は軟弱地盤で、主塔形状も軽量化の意図でA形とされていることは既述している。 そこで地震および温度変化における水平力を緩和するために開発されたのが「弾性拘束ケーブル(略称はMCD、Meiko-Cable-Damper System)」である。弾性拘束ケーブルとは主塔と橋桁にケーブルを固定するための突起を設け、これを張力をかけたケーブル2本で連結することで、ケーブルの降伏伸びをダンパーとして利用したものである。これによって主塔に作用する力は2点ピン固定比で4割減少するとしている。MCDは橋桁内部のシステムのため、普段は目にすることはない。本システムは橋の固有周期を地震による卓越周期から離して長周期地震動を低減できることが大きなメリットであり、西大橋一期線で初採用されて以後、中央大橋や東大橋でも採用されている。 当時の最高水準の水平力低減システムとして開発されたMCDも、今後想定される東海・東南海地震が発生した場合、MCD自体が損傷することが後に明らかとなり、耐震性を高める必要もあって2016年(平成28年)以後、MCDの耐震機能を廃止して、油圧ダンパー追加および従来から設置されている支承を免振タイプに交換、さらにペンデル支承の万一の破損に備えて橋桁の浮き上がりを防止するためのアップリフト防止ケーブルを取り付ける工事を施工し、西大橋一期線については2017年(平成29年)8月に完工した。ただし、主桁に作用している圧縮力のバランスを保つ名目でMCD自体は残した。
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