給油量の誤計算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 00:21 UTC 版)
「ギムリー・グライダー」の記事における「給油量の誤計算」の解説
ボーイング767は通常「燃料搭載量情報システム (FQIS)」を使って給油する。このシステムは、燃料ポンプの操作と燃料搭載量の状況をパイロットに提示するが、事故当時の143便のFQISは動作に異常をきたしていた(後に燃料タンク内の静電容量ゲージのハンダ付け不良によるものと判明)。この代替として、タンク内の燃料量は燃料計測棒 (dripstick) による直接測定を行わざるをえなかった。 事故の直接の原因となる過失はモントリオールからエドモントンへのフライトに必要な給油量の計算時に起こった。ちょうど当時のエア・カナダではヤード・ポンド法からメートル法への移行(メートル法化)の最中であったこと、そして事故機は同社でシステムにメートル法を用いる最初の機体であったことが背景にある。必要な燃料量を2万2,300キログラム と算出するまでは正しかったが、モントリオールでの燃料残量 7,682リットルを質量に換算する際に、リットルとキログラムによる比重 0.803 (kg/L) ではなく、係員が誤って、扱い慣れたリットルとポンドによる比重 1.77 (lb/L) を使用してしまった。その結果、給油量は (22,300 - 7,682 × 1.77) / 1.77 = 4,916 [L] とされたが、本来は (22,300 - 7,682 × 0.803) / 0.803 = 20,088 [L] が必要な量であった。 FQISが故障していたため、給油後に事故機の航法装置には燃料搭載量として"22,300"が手動入力された。装置のファームウェアは前述のようにメートル法に基づく処理を行っていたため、燃料搭載量は22,300キログラムと解釈されて目的地まで十分に足る量との出力を返した。しかし、実際には 10,116キログラム(12,598リットル)しか燃料を搭載しておらず、モントリオールからエドモントンへのフライトには到底足りなかった。 2名のパイロットと給油要員は装置の演算結果に疑問を抱き、3回ほど再計算を行ってはいた。しかし、同じ計算結果であったのでピアソン機長は応急的にモントリオールからの出発を指示し、それほど離れていない経由地であるオタワで燃料の再計測を行うこととした。しかし、燃料計測棒を用いた再測定でも誤った換算係数を用いて燃料残量を 20,400キログラムと見積もってしまい、燃料の致命的不足に気付くことなくオタワを発つこととなった。
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