経済学からの批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 16:50 UTC 版)
小宮隆太郎は、国内に双務主義(二国間主義)の信奉者が未だに多数存在すると指摘し、その最たる者は前川リポートの著者達であると嘆いている。 前川リポートが日本の国際経済関係にどれだけ害毒を流したか計り知れない。 前川リポートが発表された時に、これほどマクロ経済に無知な人(前川春雄)が日本銀行の総裁を務めてきたのかと驚きもしガッカリもした。 そして、経済学に則って、小宮は次の様に述べている。 経常収支の不均衡は各国を構成する経済主体が最も有利と判断して選択した行動(貯蓄投資バランス)の結果に過ぎず、互いに相手の所為ではない。また、それは、例え持続的であっても、不利でも不健全でもない。 アメリカが双子の赤字になった原因は日本の貿易収支黒字が原因ではなく、正にマンデルフレミングモデルの帰結であって、当時のアメリカが自ら招いた結果である。ロナルド・レーガン政権が国債発行で減税と財政支出の増加を賄うという拡張的財政政策を行った(レーガノミックス)。よって、政府の財政収支は大幅な赤字となった。 同時に高騰した実質金利が大量の資本流入を引き起こした。国際収支統計から明らかなように、変動相場制下では資本収支の黒字は経常収支の赤字を意味する。 一国の貿易収支又は経常収支の赤字がその国にとって不利であるという考えは典型的な重商主義の誤謬であって、経済学的に初歩的な誤りである。アメリカの経常収支赤字はアメリカの経済主体が貯蓄より消費や投資を選んだ結果であって、同じく日本のその黒字は日本の国民が消費や投資より貯蓄を選んだ結果である。 日本の大幅な対米貿易収支黒字は市場の閉鎖性に因らない。貿易障壁の変化の結果は、中長期(趨勢)的な交易条件に影響を及ぼすのであって、変動相場制下では為替レートの変化で相殺されるので貿易収支には影響を与えない。 最終的に小宮は、前川リポートは貿易収支について次の視点を欠いていて的外れであると結論付けた。 国際収支は国民経済全般に渡り相手国の経済にも関連する現象であるので、問題をマクロ経済学的に考える必要が有る。 与件の変化や経済政策が経常収支に及ぼす影響は為替レート制度が固定相場制か変動相場制かや資本移動が自由か否かによって大きく異なる。 経常収支の動きは循環的変動と趨勢的傾向に分けて考えられねばならない。
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