経済学としての経済地理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/14 08:14 UTC 版)
「経済地理学」の記事における「経済学としての経済地理学」の解説
19世紀に、ドイツのヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネンは、中心に1点の需要地がある以外に全く均質な農業生産空間を前提し、そこに、距離という空間の要素をとりいれたとき、いかなる土地利用の不均質性ができるか説明する論理を構築することに成功した。20世紀に入り、やはりドイツのヴァルター・クリスタラーは、人口が全く均質に分布する需要空間を前提として、財の到達範囲と呼ぶ消費者行動の距離的限界から、多様な種類の財の配給拠点から少ない種類の拠点に至る、中心地の階層体系が成立することを論証した中心地理論を提起した。 これらの、今日では古典となっている立地論研究により、当初前提された均質な空間のうえに経済活動によって不均質な空間が成立することを説明する、という斯学の課題が明確になり、経済地理学は経済学の一分野としての地位を確立した。 戦後、ドイツを中心とした経済地理学の伝統は米国に移り、ウォルター・アイザードが、これまでの立地論や地域経済論を総合して、近代経済学の立場から経済の空間適差異を説明する論理を構築した。また、1990年代以降、米国の経済学者ポール・クルーグマンらが、国際貿易理論から展開して、収穫逓増を前提し数理的な手法で特定地域への集積を説明する理論を構築し、それを「新経済地理学」と称した。 また、同じ米国では、マルクス経済学の流れにたつ経済地理学では、もともと人文地理学出身ではあるが、マルクス経済学の徹底した修得を果たしたデヴィッド・ハーヴェイや、制度派経済学までふくむ透徹した経済学理解を獲得したアラン・スコットらを中心に、マルクス経済学を空間的に展開する新たな理論的試みが1970年代後半から展開し、これらはその後、批判地理学という大きな流れに成長していった。これには、海外の人文地理学者も加わっており、経済地理学の中に文化的要素を取り入れて「経済地理学の文化論的転回」を図り、社会学のカルチュラルスタディーズとの学術的交流による空間論の建設的な止揚へとつながっている。
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