篳篥の製作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 08:09 UTC 版)
篳篥の音程には寺院の鐘の音が使われる。京都の妙心寺、知恩院の梵鐘の音とそれぞれ決められている。 楽器の音階を決める穴配りと穴開けには高度の製作技術が必要とされる。穴開けには電動錐は使われない。穴と穴に距離がある楽器ならば素材が割れないので電動錐を使えるが、篳篥は穴の間隔が近く、使う素材は枯れて古く乾燥し、農家の囲炉裏の天井で 300年 - 350年、日々の生活の中で燻(いぶ)された煤竹であるため非常に堅く割れやすい。紐巻上げ式で、神社の儀式で神火をおこすときに使われることでも知られる日本古来から使われてきた火熾しの「巻き錐」を使い、割れないように穴をあける。素材の竹は自然に育ったものなので内径、肉厚がすべて微妙に異なるため、外形の穴の位置を正確に真似ただけでは音階は決まらない。 漆を中に塗って音階を調整する。製作技術習得者には、音律の習得は技術習得の最初の 6 ヶ月間に集中して習得してしまうことが求められる。木漆と水を合せて内径をヘラで塗る。乾かして吹いて確認し、音階を調整する。篳篥に使われている素材は乾ききった古くもろい竹であるため、塗りに失敗すると漆の乾き際に穴から下まで一直線に割れが入る。漆は湿度が高いと急激に固まり(乾き)湿度が低いと固まらない(乾かない)ため、昔の京都でこの作業ができた時期は春は3月末から5月末、秋はさらに短い期間であった。篳篥の内側の漆はこの時期のみ塗ることができ、この時期以外は塗ると割れてしまう、とされた。 篳篥の形は古来から大きさが決まっているので先人の作品が技術向上の参考になる。管楽器の笙は1尺7寸、13世紀の鎌倉初期までは大きな笙だったがその後は小さくなった。しかし笛と篳篥は昔から長さが決まっているのでそれ以前の昔に作られた名器が参考になる。 舌の材料に用いられる葦は琵琶湖、淀川から採取されることが多い。なかでも淀川右岸の鵜殿で採取される葦は堅さ、締り共に最良とされていた。しかし環境の悪化の影響で材料に使える良質な葦の確保が難しくなっている。 採取した葦は4,5年ほどの年月をかけ、一切の湿気を排除した場所で乾燥させる。その後、拉鋏という専門の道具を用い、火鉢の上にかざして押し潰して平滑にし、先端に和紙を貼り付ける。 舌を磨く際にはムクノキの葉が用いられる。
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