節水装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:52 UTC 版)
節水装置の概念(左)船が閘門を下る場合(右)船が閘門を上る場合 水を節約する単純な方法としては、閘門の数を増やすことが挙げられる。しかし閘門ごとに船と閘門の操作が必要なため、通過に要する時間が増える。これに代えて採られる方法が、閘門の上流区と下流区の中間に節水装置(節水池、節水槽)と呼ばれるため池を造ることである。このため池は、船が下流に向かう時に吐き出される水を蓄え、次に船が上流へ向かう時に閘室へ吐き出す。これにより1回の充排水サイクルで水が下流へ放流される量を減らすことができる。 右の図では節水装置の水の流れを示している。この閘門には節水装置のため池が3つあり、上からA、B、Cとなっている。船が上流から下流へ向かう場合、これらのため池は空の状態である。閘室に船が入り、閘室内の水を下流へ流すときに、まず図の1の部分の水をAに流し込み、水位が下がってくると次に2の部分の水をBへ、さらに3の部分の水をCへ流す。最後の4と5の部分は下流区へ放流する。この後下流から上流へ向かう船が来たときには、Cのため池の水をまず閘室内に流し、続いてBの水を、そしてAの水を流し込む。最後の1と2の部分にだけ上流区からの水を入れる。これによってこの例では、1回のサイクルで必要とされる水を5分の2に減少させることができる。この過程でも常に水は上から下へ重力にしたがって流れるのみで、揚水は必要としていない。池の形状は浅くて広いことが望ましいため、英語ではbasin(浅い池、水盤)と呼ばれる。 例を挙げると、1919年から1928年に掛けてドイツ、ハノーファーに建設されたヒンデンブルク閘門 (Hindenburg-lock) では、全長225メートルの2つの閘室を持ち、1回の充排水サイクルで42,000立方メートルの水を消費する。10個のため池を持つ節水装置を使うことにより、10,500立方メートルの消費量で済むようになる。2016年竣工のパナマ運河新閘門では、節水装置により約6割の水が再利用され、一隻通過時の消費水量の7%が節約される。 イングランドの運河では、このため池はサイド・パウンド (side pound) と呼ばれ、これを操作する装置はしばしば赤く塗られている。これが有名な言葉、「赤の後に白を使えば大丈夫、白の後に赤を使うとあなたは死ぬ」 (Red before white, you're alright; white before red, you're dead) の元になっている。ただしこの言葉にある「死ぬ」ということは、機構自体の本質的な問題を指しているのではなく、(水を浪費してしまうことで)閘門管理者の怒りを招くということを指している。中間の運河区が短いフライト・ロックの中には、運河区が空になってしまわないように保証するため池とするために、脇に運河区を延長してあるものがある。この拡張された中間運河区は、しばしばサイド・パウンドと混同される。
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