筋立ての特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 13:46 UTC 版)
「マノン・レスコー (オベール)」の記事における「筋立ての特徴」の解説
スクリーブの設定の原作の小説との相違点は、マノンは贅沢な生活の魅力で誘惑されても、ほとんどなびかず、 オペラ全体を通して彼女が忠実であるデ・グリューへの愛がはるかに強いことである。これは、デ・グリューが拉致される場面、神学校でマノンが彼を誘惑する場面、賭博場での騒動などを削除したため、浮き上がって来ている。また、マノンの金銭的に保護する役の貴族は一人に限定されている。また、ジェルヴェと結婚すること以外何らの望みも抱いていない正直者のマルグリートを設定しており、〈女友達がいるマノン〉による女性同士の友情を結ばせた。また、第2幕で彼がデ・グリューに刺される場面では「恋人たちが幸せであるように」とまで言わせている。スクリーブは最初の2幕においては19世紀という時代を生き生きと描写することで、3幕ではフランス第二帝政期の植民地主義的野心を時々オッフェンバックのエコーを感じさせつつ描くことで、18世紀のより悲惨な状況をほのめかすことを避けたのである。スクリーブは不実さに基づく筋立てをオペラ作品に面白さを与えるような不名誉な行為を盛り込んだ幾つかの項目で巧妙に包み隠している。この結果、聴衆と批評家は見せかけ上の天真爛漫さを温かく歓迎した。観衆としては、誰もショックを受けたものはいないように見受けられた。この結果、オベールのヒロインに漲る個性は、何よりも〈愛くるしさ〉が際立って表れてきた。 これらの設定は当時のオペラ・コミック座でのオペラ・コミック作品の上演と言う状況に合わせるためであった。その背景は、オペラ=コミック座で上演される演目は全編をフランス語で歌い、幕の数は多くても3幕建て、曲間に台詞の対話が入るオペラ=コミック様式の作品で、台詞入りで筋立ての理解がしやすく、市民層に愛されたことで、この劇場は徐々に中産階級の見合いの場に利用されるようになり、長らくハッピーエンドが 不文律であった。しかし、業界の大物二人は内容の硬直化を懸念して、新たな趣向を盛り込もうとした。悲劇的結末を歓迎しない聴衆の心情を考慮して、ドラマをなるべく穏当な方向に持ってゆこうと意図したのである。その結果、不文律を冒した〈ヒロインの死〉もこの上なく美しい名場面となった。 この後、オペラ・コミック座ではビゼーの『カルメン』(1875年)、レオ・ドリーブの『ラクメ』(1883年)、クロード・ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』(1902年)のといった悲劇的結末を迎える作品が上演されるようになる。
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