第8軍の侵攻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 01:04 UTC 版)
第8軍の侵攻開始時点で枢軸国軍は、トブルク周辺にイタリア軍の第17パヴィア、第25ボローニャ、第27ブレシア、第102トレントの各歩兵師団及び第101トリエステ自動車化歩兵師団を配備し、国境付近の拠点(バルディア (Bardia)、ソルーム (Sollum)、ハルファヤ (Halfaya) 峠など)及びトブルク周辺の拠点にイタリア軍とドイツアフリカ特殊任務師団を配備していた。また、機甲部隊のドイツ第15及び第21装甲師団を、トブルクとバルディアの中間付近に配備し、イタリア第132アリエテ戦車師団を予備としてトブルク南方のビル・エル・グビ(Bir el Gubi)に配備していた。 11月17日、リビア・エジプト国境付近の豪雨の中をイギリス第30軍団の各師団はマッダレーナ (Maddalena) 砦から国境を越え西へ移動を開始し、18日朝には第7機甲師団の先頭部隊はトブルク包囲陣外郭まで40kmの地点に到達した。第4機甲旅団は東側にとどまり、第22機甲旅団は中央のビル・エル・グビに、第7機甲旅団はトブルクの南東シディ・レゼグ (Sidi Rezegh) へ侵攻した。また、これら機甲旅団の南に南アフリカ第1師団が進んだ。けれども、この配置は3個の機甲旅団を分散させることとなって、後に枢軸国軍に各撃破されることとなった。また、イギリス第13軍団は東からソルーム (Sollum) 方面へ侵攻した。 11月18日、イギリス軍は午前中、国境付近のシディ・オマール (Sidi Omar) からトブルクの南の内陸エル・クアスク (El Cuasc) までの約 60km の線で前進を続けていた。18日午後になってローマから戻ったロンメルへ、前線の警戒部隊からイギリス第8軍の攻撃開始の報告が入った。これに対し、ロンメルは直ちにトブルク攻撃を延期し反撃の準備を始めた。 19日にはイギリス第13軍団のインド第4歩兵師団はソルームを東側から鉄条網と地雷により封鎖し、南のシディ・オマールに向かっていた。またこのころ、ニュージーランド第2師団は国境沿いの枢軸国軍拠点を包囲しながら枢軸国軍防衛線を西側からソルームへ向かっていた。イギリス第7機甲旅団は、トブルク攻略のために配備されていたドイツアフリカ特殊任務師団の背後、トブルクの南東シディ・レゼグへ攻撃を開始し、いったんはここを占領した。第13軍団ではインド第7歩兵旅団(インド第4歩兵師団所属)がシディ・オマールへ攻撃を開始した。これに対し、ロンメルはイギリス軍全体の状況を把握できずにいたが、第2次トブルク攻撃を延期し、装甲師団による反撃の準備を始め、まず第21装甲師団の一部をガブル・サレー (Gabr Saleh) へ派遣した。翌20日午前ロンメルはイギリス第13軍団の攻撃を攻撃主力とみて、第15、第21の2個装甲師団をいったんは国境方面へ向かわせたが、午後にはイギリス軍の攻撃主力がトブルク南方の第30軍団の機甲部隊であるとして、イギリス第7機甲師団側面へ向けて2個装甲師団により攻撃を始めた。 また、トブルク南方の交通の要所ビル・エル・グビでは、イギリス第22機甲旅団と南アフリカ第1歩兵旅団(南アフリカ第1師団所属)の攻撃をイタリア第132アリエテ戦車師団がしのいでた。自軍の兵力が敵兵力より少ないものと見ていたロンメルは、背後から攻撃を行なえる有利な地点に進出し、トブルクを目指し北上してくる敵軍を各個撃破する方針とした。 20から21日かけての夜間にトブルク守備隊が攻撃に出たものの、一旦は撃退された。けれども、次の歩兵戦車50台が随伴したイギリス第70師団の攻撃は、イタリア第25ボローニャ歩兵師団の防衛線を突破し砲兵隊2個大隊を全滅させた効果のあるものだった。これに対しては、手持ちの部隊でなんとか対応しその穴をうめた。21日、ドイツ軍はシディ・オマール西方からイギリス第7機甲旅団の背後を衝き、イギリス軍を敗走させ、機動的防御態勢をとった。 22日には、ドイツ第21装甲師団がシディ・レゼグで苦戦中のドイツアフリカ特殊任務師団の救援に向かい、飛行場とその周辺でイギリス軍との激戦となりドイツ軍がこれを奪還した。また、夕方ドイツ第8戦車連隊(第15装甲師団所属)が第4機甲旅団を壊滅させた。イギリス第13軍団は国境付近で、ソルーム背後の敵陣とハルファヤ峠に対し攻撃をおこなったが、枢軸国軍はカプッツォ砦 (Fort Capuzzo) がニュージーランド第2師団に占領された他はなんとか持ちこたえた。
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