稚児
『秋夜長物語』(御伽草子) 比叡山の桂海律師が三井寺の稚児梅若と契りを結ぶが、梅若は天狗にさらわれてしまう。三井寺の僧たちは、桂海が梅若をかどわかしたものと誤解し、三井寺と比叡山との間に戦争が起こる。三井寺は全焼し、その原因は自分にあると思った梅若は、勢多(瀬田)の橋から身を投げる。桂海は西山の庵で梅若の菩提を弔い、後に瞻西上人と名を改める。
『あしびき』(御伽草子) 比叡山で学問修行する若僧・侍従の君が、白河の辺りで、奈良の民部卿得業(とくごふ)の子である稚児をかいま見て、契りを交わす。稚児の「いづこの人?」との問いに、侍従の君は「『あしびきの』とこそ申したう侍るに・・・」と言って、山(=比叡山)の僧であることをほのめかす。稚児は継母によって長い黒髪を切られたり、命をねらわれたりするが(*→〔継子殺し〕2)、後には、侍従の君と稚児は高野山の庵室でともに修行に励み、相次いで往生した。
『二人の稚児』(谷崎潤一郎) 比叡山で育ち10代半ばになった稚児、千手丸と瑠璃光丸は、「『悪魔』『地獄の使い』などと言われる『女人』を見たい」と思う。千手丸は下山し、深草の長者の娘婿となって、神崎や江口の遊女たちと歓楽の日々を送る。瑠璃光丸は山にとどまり、煩悩を断つべく法華堂に参籠する。夢に気高い老人が現れ、「前世でお前を慕った女が、比叡山の鳩に転生した。お前とその女は、来世でともに西方浄土に生まれ、極楽の蓮華の上で菩薩の相を現ずるだろう」と告げる。
『稚児今参り』(御伽草子) 比叡山の稚児が、内大臣の姫君を見て心奪われ、姫君に近づくべく女装し、女房となって仕える。やがて稚児は正体を明かして恋情を訴え、姫君は稚児の子を身ごもる。ところがその後、稚児は天狗にさらわれてしまい、姫君は稚児を捜して山中をさすらう。山中の庵の尼天狗が、稚児を姫君のもとへ返し(*→〔尼〕4)、稚児は男姿になって姫君を正妻とした〔*姫君は男児、次に女児を産み、女児は女御となって一家は栄えた〕。
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