租税立法に対する統制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 14:51 UTC 版)
「租税法律主義」の記事における「租税立法に対する統制」の解説
課税要件法定主義(納税要件法定主義) 課税要件(租税を課税するための要件)と、納税要件(租税を納税するための要件)の全てのみならず、権力的要素が強い租税の賦課・徴収の手続も予め法律によって規定されなければならないとする原則。 法律の法規創造の原則からの要請でもある。刑法における罪刑法定主義に対応する。 一般的に条約は国内法に優越し、法律を介さずして国内法としての効力を持つことがあるが、租税条約に関しては直接国内に適用することはできない。 特に課税根拠条項(納税義務を拡大・創設する条項)は法律なくして国内に適用することは許されないが、締結・批准された租税条約の中心をなす課税制限条項(国際的二重課税排除のために締結国の課税権を制限する条項)は規定が一義的・明確である限り、例外的に国内適用可能性を持つ。課税要件簡素化主義 税法を簡素化すべきという要請。租税に関することを全て法律で規定しようとするとあまりにも複雑になってしまうため。 法律の留保の原則 法律の根拠によらずに、政令や省令において新たに課税要件に関する定めをしたり、現行の課税要件を変更することはできないとする原則。 法律の優位の原則 法律の定めに違反する政令や省令などは、これを無効であるとする原則。 政令省令への委任に関する原則 租税立法において課税要件および租税の賦課や徴収に関する事項を政令や省令に委任することは許されるものではあるが、課税要件法定主義の趣旨から、一般的白紙的委任は許されず、委任の程度や基準と内容が法律で明確にされなければならない。 また、基本的事項は法律に規定される必要があり、命令に委任できるのは技術的細目的事項に限られる。 課税要件明確主義(納税要件明確主義) 課税要件・納税要件と賦課徴収手続は、納税者である国民がその内容を理解出来るように、一義的で明確に定められなければならないとする原則。税務行政に自由な解釈・裁量を認めない要請。 租税法律主義の持つ法的安定性・予測可能性が十分に機能するために不可欠な要請である。申告納税制度の運用にも役立っている。手続的保障の原則 租税の賦課・徴収は「適正な手続」で行われなければならず、それに対する訴訟は「公正な手続」で行われなければならないとする原則。 日本では日本国憲法第31条【法定手続の保障】「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」および日本国憲法第32条【裁判を受ける権利】「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」を根拠としている。 租税法律不遡及の原則(遡及立法禁止原則) 納税者に不利な遡及適応は許さないとする原則。 不確定概念 課税要件明確主義の例外。「著しく減少させる」「正当な理由」「必要がある時」など。 税法が変化の激しい国民生活や経済情勢に対応し、税収の確保や租税負担の公平化を実現化するためにやむをえない面もある。ただし、法的安定性・予測可能性を維持するために、租税立法者は当該既定の趣旨・目的をあらかじめ明確にする必要がある。
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