確率計画とは? わかりやすく解説

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確率計画

読み方かくりつけいかく
【英】:stochastic programming

概要

ほとんどの現実問題確率的であるということから, 1955年ダンツィク (G.B. Dantzig) とビール (M. Beale) によって全く独立始められたのが確率計画である. 両者とも2段階計画問題考えたが, その後1959年チャーンズ (A. Charnes) とクーパー (W.W. Cooper) によって確率制約計画問題導入された. 一般的には解法難しいので, 問題固有の構造利用した特殊解法や近似解法研究数多くなされている.

詳説

 数理計画問題において, 目的関数制約条件係数中に確率的要素含まれているとき, これを確率計画 (stochastic programming)(確率計画法, 確率計画問題)と呼ぶ. いま, 制約条件係数確率変数を含む線形計画問題


\begin{array}{ll}
\mbox{min.} & c^{\top}x \\
\mbox{s. t.}& T(\omega)x=h(\omega), \\
 & Ax=b,\ x\ge 0, \\
\end{array}\,


考える. ここで, c,b,A\, それぞれ既知ベクトルや行列で, T(\omega)\, , h(\omega)\, 確率事象\omega\, 依存するランダムな行列およびベクトルである. 確率変数を含む制約条件すべての実現値に対して満たされるとは限らない. そこで, 確率計画問題として2つアプローチ2段階計画問題 (two-stage programming problem)および確率制約計画問題 (probabilistic constrained programming problem)がある [1], [2].

 まず2段階計画問題では,確率変数含まれる制約条件T(\omega)x=h(\omega)\, においてこの制約条件成り立たせなくさせている両辺の差 h(\omega)-T(\omega)x\, に対してその外れ具合矯正するためにリコースというものを考える. 具体的に次のようなリコース行列W\, およびリコース変数y\, 考える.


Wy=h-Tx,\ y\ge 0\,


すなわち, 2段階計画問題次のように定式化される.


\begin{array}{ll}
\mbox{min.} & c^{\top}x+
 \mbox{E} [\mbox{min}\ q(\omega)^{\top}y(\omega)] \\
\mbox{s. t.}& T(\omega)x+Wy(\omega)=h(\omega), \\
 & Ax=b,\ x\ge 0,\ y(\omega)\ge 0.\\
\end{array}\,


 次に確率制約計画問題において, 制約条件が必ずしも満たされなくても, ある確率上で満たされれば良い場合考える. 例えば, T(\omega)x\ge h(\omega)\, という制約条件代わりに確率\alpha\, 上で成り立つという確率制約条件


\Pr\{T(\omega)x\ge h(\omega)\}\ge \alpha\,


考える. 目的関数の型によってEモデル, Vモデル, Pモデルなど様々なモデル考えられる.

 2段階計画問題確率制約計画問題も, 通常等価確定問題すなわち非線形計画問題変換して解く. 一般にはこの変換は非常に複雑な形になる. 通常2段階計画問題の方が確率制約計画問題より等価確定問題への変換難しい. そこで確率計画の切除平面法であるL型のような確率分布特別な構造利用した解法や, 様々な近似利用した解法研究されている [1], [3].

 確率計画問題において, 通常確率変数分布関数与えられているとするが, 一般に分布関数が完全に分かることは難しい. いま完全情報すなわち確率変数将来実現値を知るために決定者が最大どれだけの価値支払うかを調べる. この価値完全情報の期待価値 (expected value of perfect information; EVPI)と呼ばれる. 完全情報を得ると実現値に対して, 最適解最適値を正確に知ることができる. そこで, 最適解最適値の確率分布求め問題, すなわち分布問題 (distribution problem)が考えられるが, この問題通常非常に難しい. 分布問題近似として確率変数をその期待値置き換えた問題考え, このときこの期待値問題確率入ったリコース問題との最適値の違い確率解の価値 (value of the stochastic solution; VSS)と呼ぶ. これは確率計画として解くことの価値を表すものである. EVPIやVSSの上限と下限挟まれ区間をより厳密に求めることが研究されている[1], [5].

 その他確率計画では推定近似など統計的な方法用いたもの [4] やファイナンス, ポートフォリオのような応用面を対象とした研究多くなってきている.



参考文献

[1] J. R. Birge and F. Louveaux, Introduction to Stochastic Programming, Springer-Verlag, New York, 1997.

[2] S. Vajda, Probabilistic Programming, Academic Press, New York and London, 1972.

[3] A. Prékopa, "The Use of Discrete Moment Bounds in Probabilistic Constrained Stochastic Programming Models," Annals of Operations Research, 85 (1999), 21-38.

[4] R. J-B Wets, "Stochastic Programming," in Optimization, G. L. Nemhauser, A. H. G. Rinooy Kan and M. J. Todd, eds., North-Holland, 1989. 石井博昭 訳,「確率計画法」, 伊理正夫, 今野浩, 刀根薫監訳,『最適化ハンドブック』, 朝倉書店, 1995.

[5] 塩出省吾,「確率計画法」, 西田俊夫, 田畑雄編,『現代OR入門』,現代数学社, 1995.



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