破棄差し戻し判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/11 12:02 UTC 版)
「永山則夫連続射殺事件」の記事における「破棄差し戻し判決」の解説
1983年7月8日に上告審判決公判が開かれ、最高裁第二小法廷(大橋進裁判長)は控訴審の無期懲役判決を破棄し、審理を東京高裁へ差し戻す判決を言い渡した。最高裁が量刑不当を理由に被告人にとって不利益な方向で控訴審判決を破棄し、高裁への差し戻し(控訴審のやり直し)を命じた事例は戦後の刑事裁判史上初めてだった。同小法廷は「永山は犯行時少年で、かつ極めて不遇な家庭環境で生育したことから精神の健全な成長を阻害されたなど同情すべき点が多々あり、第一審判決後に結婚して伴侶を得たこと、遺族の一部などに被害弁償したことなど、永山にとって有利な情状も多数ある。しかし同様の環境的負因を負う兄弟は永山のような軌跡をたどることなく立派に成人しており、犯行時少年とはいえ年長少年で、犯行動機・態様から窺われる犯罪性の根深さに照らしても、永山を18歳未満の少年と同視することは困難だ。そのため『永山の犯行は一過性のもので、精神的成熟度は18歳未満の少年と同視しうる』など、証拠上明らかではない事実を前提として国家・社会の福祉政策を関連付けることは妥当ではない。控訴審の無期懲役判決は事実の個別的な認定・総合的な判断を誤り、甚だしく量刑を誤ったもので、破棄しなければ著しく正義に反する」と判断したが、自判で死刑を宣告することはなく、「本件事案の重大性・特殊性にかんがみ、さらに慎重を尽くさせる」として審理を東京高裁へ差し戻した。佐木(1994)は「同小法廷が自判で死刑を宣告せず、審理を東京高裁に差し戻した理由は『改めて東京高裁に審理させることで、事実関係・情状面で新たな発見があるかもしれない』と判断したものとされる」と述べている。 また同小法廷は判決理由で死刑適用基準について初めて詳細に明示したが、この際の基準は後に「永山基準」と呼ばれ、後の刑事裁判でも死刑選択基準として採用されている。 「永山基準」も参照
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