発泡剤プラズマ圧力法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:31 UTC 版)
「テラー・ウラム型」の記事における「発泡剤プラズマ圧力法」の解説
発泡剤プラズマ圧力法は、チャック・ハンセンにより開発段階で提案されたもので、これは熱核兵器の容器内に充填する発泡剤に関する調査資料(現在は機密解除されている)を基にしている。 発泡剤を使用した熱核兵器の起爆構造は以下の様になる。 プライマリー内のコアの周囲を囲んでいる高性能爆薬は、爆発すると核分裂燃料を臨界量まで圧縮し、核分裂連鎖反応を開始させる。 プライマリーの核分裂によりX線が放射されるが、これは爆弾の容器部分により内側に反射され、ポリスチレンの発泡剤に放射される(X線の反射の意味については、下図を参照のこと)。 X線を浴びた発泡剤は相転移を起こして高温のプラズマになり、これはセカンダリーに向かって行き“タンパー”を強力に圧縮し、“スパーク・プラグ”内で核分裂反応を始めさせる。 プライマリー起源のプラズマ(外側)とスパーク・プラグ(内側)の両方から圧縮されることで、“重水素化リチウム”燃料は高温・高圧の熱核反応を起こす状態にまで加熱・圧縮される。また中性子の放射も受けることで、リチウム6の原子は2つの三重水素原子に分裂する。そして三重水素と重水素が核融合反応を始め、さらなる中性子と膨大な量のエネルギーを放射する。 核融合反応を始めた燃料は多量の高速中性子を発生し、これはウラン238で出来たタンパー、および爆弾の容器に放射され、ウラン238は核分裂反応を始める(デザインによっては、全体の爆発エネルギーの約半分が、この核分裂反応によって発生する)。 これは完全な“核分裂-核融合-核分裂”反応となる。核分裂とは異なり、核融合は比較的“クリーン”な反応で、エネルギーは発生するが有害な放射性物質や多量の放射性降下物は発生させない。しかし(特に最後の)核分裂反応は、莫大な量の放射性降下物を発生させる。もしウラン製タンパーの材料を鉛に変更し、最後の核分裂反応を起こさない様にすれば、核爆発の核出力は約半分になるが、放射性降下物は比較的少ない量に抑えることが出来る。 現在の発泡剤プラズマ圧縮法に対する技術的評価は、同様の高エネルギー物理学分野からの機密解除された分析結果に焦点が移っている。この分析によると、この様なプラズマによる圧縮法では放射性容器内での中性子の発生効率が低く、また発泡剤がプライマリーからのγ線とX線の吸収効果も低いことが知られている。プライマリーで発生したエネルギーの多くは、核弾頭容器の壁やタンパーの放射性物質に吸収されてしまう。この吸収されたエネルギーは、後述する“蒸発(アブレーション)”作用を起こさせると分析されている。 しかしながら、トリウムやウランの様な大きい原子量の塩類を染み込ませたエアロゲル型材料は、プライマリーからのX線の高い吸収効果を発揮し、発泡剤のプラズマ圧力がセカンダリーを放射圧縮させることを可能にする。
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