病原体とエンドサイトーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 23:15 UTC 版)
「エンドサイトーシス」の記事における「病原体とエンドサイトーシス」の解説
エンドサイトーシスのうち特に食作用は、本来は、体内に侵入した細菌などの病原微生物を排除するための、重要な生体防御機構である。感染の初期に、侵入した微生物を好中球やマクロファージが貪食することで、病原体が排除される。またマクロファージは、貪食して細胞内で分解した異物の断片を細胞表面に提示(抗原提示)し、それをヘルパーT細胞が認識することにより、その抗原(異物断片)に特異的な抗体の産生を促進するという、抗原提示細胞としての役割を担っており、感染初期だけでなく、もっと多くの病原体が侵入したときにも対処できるように、より高度な免疫システムへの情報の橋渡しを行っている。 一方、病原体にとっては、食作用によって排除されると不利益であるので、食作用から逃れるさまざまな機構を発達させた病原体が多く存在する。たとえば、一部の病原細菌には、莢膜や粘液層と呼ばれる、多糖類やペプチドなどの分泌物からなる層で自分自身を包んでいるものが存在し、この構造により食細胞による貪食を回避している。このことは病原体の生存にとって有利に働き、ヒトなどの宿主にとってはこのような貪食回避機構を持つ病原体は病毒性の強いものとなり、医学上問題になることが多い。 またウイルスなどの偏性細胞内寄生体や、宿主細胞内に寄生する一部の細菌(細胞内寄生体:赤痢菌、サルモネラ、結核菌など)は、その増殖の場となる細胞内部に侵入する際に、エンドサイトーシスを利用することが知られている。 ウイルスに関しては、アデノウイルスなどのエンベロープを持たないウイルスは一般に細胞に侵入する機構としてエンドサイトーシスを利用する場合が多い。また、エンベロープを持つウイルスでもインフルエンザウイルスなどは、エンドサイトーシスによる細胞内侵入を行う。 細菌に関しては、ほとんどの細菌にとっては食細胞に取り込まれることは、その後にリソソームの働きによって殺菌されることにつながるが、一部の細菌ではエンドソーム膜を溶かして細胞質に逃れたり、エンドソームの性質を変化させてリソソームとの結合を阻害したり、リソソーム中の活性酸素に抵抗性を示すなど、さまざまな手法により殺菌から逃れて、細胞内に侵入して感染する。これらの細胞内寄生性細菌には、むしろ積極的にエンドサイトーシスを引き起こすことで、マクロファージや上皮細胞などに取り込まれようとする機構を有するものも見られる。
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