甲種本
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 14:16 UTC 版)
上下二巻。甲種本は、史上の異敵とその降伏(こうぶく)に関する事蹟が述べられ、上巻においては神功皇后のいわゆる「三韓征伐」、皇后の皇子であり八幡大菩薩とされる応神天皇の事蹟、文永の役における蒙古軍の襲来、対馬・壱岐への侵攻、九州上陸と九州御家人勢との戦闘の状況、箱崎八幡宮(筥崎八幡宮)の焼亡などが記される。 下巻は弘安の役における思円上人・叡尊の修法、蒙古退却の奇瑞などを記述する。 甲種本の特徴としては、文永の役におけるモンゴル・高麗連合軍である蒙古軍の対馬・壱岐侵攻に関する史料となっている点である。また、箱崎八幡による奇瑞や神威の顕現によって度々蒙古軍が撃退されたことが述べられている。さらに、叡尊の祈祷による霊験の成果が強調されており、本書の成立に社寺の祈祷に対する朝廷からの恩賞問題が関わっていた可能性が指摘されている。元寇当時、日本各地の社寺では敵国調伏の祈禱が行われており、蒙古軍が去った後、「我々の祈祷のおかげで蒙古軍はさんざんに打ち負かされた」と朝廷に訴えて武士以上の恩賞を得ようと運動していた。八幡愚童訓も、元寇における八幡神の活躍を宣伝した布教用文書とみられる。(群書類従 第一輯 神祇部 巻十三 収録)
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