用語解説・歴史的経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/28 09:37 UTC 版)
「超越論的」(独:Transzendental、英:transcendental)という語彙は、「超越的」(独:Transzendent、英:transcendent)との対で考えると、分かりやすくなる。 「超越的」(独:Transzendent、英:transcendent) - 「超越論的」(独:Transzendental、英:transcendental) 西洋の哲学史においては、古代ギリシャのピタゴラス教団・エレア派(総じて「イタリア学派」)・プラトン以来、本質存在・真実存在は、知覚・経験の対象とはならない、それらを超えたもの、すなわち「超越的」なものであるという考え方が、主流の一角を占めてきた。 (もちろん、「この世の摂理は人智を超える、神々のみぞ知る」といった発想自体は、(他の地域と同様に)哲学の登場以前、神話の時代から脈々と継承されてきた発想である。) これらの哲学者達は、こうした知覚・経験を超えた「超越的」な真実在には、理性・論理・数学などによってのみ接近・到達できると考えていた。 こうした古代ギリシャ特有の「理性主義」「論理主義」的発想・作法は、キリスト教文化との混交・融合によって、中世の神学(スコラ学)へと受け継がれ、更には近代哲学の大陸合理論にも継承されるが、そもそも根拠となる「理性」自体の規定が曖昧なため、そこで生み出される認識内容は「独断論」のそしりを免れないものであった。また他方で、経験に依拠するイギリス経験論においては、端から経験を超えた「超越的」な真実在についての認識など期待できるはずもなく、ヒュームの懐疑論に至ってそれは決定的なものとなった。 こうした状況を目の当たりにしたカントは、「理性自体の吟味・批判」を通じて、「人間の適正な理性的認識は、どこまで可能なのか」「人間の理性は、経験を超えた(先験的な)「超越的」真実在(すなわち物自体)と、どのように関わるべきなのか、関わり得るのか」についての、境界策定・基準設定(メタ規定)を行うことで、「超越的」なものに対する考察・関与(すなわち形而上学)の余地を、適正な形で復興しようと試みた。これがカントの「批判哲学」であり、「超越論哲学」(先験哲学)である。 したがって、ここでいう「超越論的」(独:Transzendental、英:transcendental)哲学という表現は、 「経験を超えた(先験的な)「超越的」真実在(すなわち物自体)- にまつわる適正な理性関与 (- の境界策定・基準設定(メタ規定)) - についての、事前的な/先行的な/自覚的な」 哲学ということであり、「超越(についての)≪前提≫論的」「超越(についての)≪メタ≫論的」等とも言い換えることができる。
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