現象学派心理学による定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/24 05:18 UTC 版)
「スピリチュアリティ」の記事における「現象学派心理学による定義」の解説
現象学派心理学(phenomenological psychology)で臨床心理学 のエルキンス(David N. Elkins)らは1988年の論文で定義を行うにあたって、次の仮定を示している。 仮定1. 人間の経験の中にはスピリチュアリティとしか呼びようのない次元がある。 仮定2. スピリチュアリティは人間的現象であり、潜在的には誰にでも起こりうる。 仮定3. スピリチュアリティは宗教と同じではない。 仮定4. スピリチュアリティを定義し、それを評価する方法を開発できる。 この仮定では、スピリチュアリティは人間の経験であり、人間現象であるとされている。この仮定に基づき、文献調査と宗教関係者へのインタビューを行い、スピリチュアリティとは「超越的次元の存在の自覚によって生じる存在・経験様式のひとつであり、それは自己、他者、自然、生命、至高の存在と考える何かに関する一定の判別可能な価値観によって特徴づけられる」と論じ、「魂を養い、霊的側面を発達させるプロセスおよびその結果」と定義した。 さらに彼らは、スピリチュアリティを9つの要素から成る多元的構成体として再定義し、それぞれの要素を測定するための尺度を開発している。 超越的次元の存在: 超越的次元、すなわち何かしら「見えない世界」の存在を信じ、それと繋がることで力を得ていると感じる。 人生の意味と目的: 人生には意味があり、存在には目的があると確信している。 人生における使命: 生への責任、天命、果たすべき使命があると感じる。 生命の神聖さ: 生命は神聖であると感じ、畏怖の念を抱く。 物質的価値: 金銭や財産を最大の満足とは考えない。 愛他主義: 誰もが同じ人間であると思い、他人に対する愛他的感情を持つ。 理想主義: 高い理想を持ち、その実現のために努力する。 悲劇の自覚: 人間存在の悲劇的現実(苦痛、災害、病気、死など)を自覚している。そのことが逆に生きる喜び、感謝、価値を高める。 スピリチュアリティの効果: スピリチュアリティは生活の中に結実するもので、自己、他者、自然、生命、何かしら至高なる存在等とその個人との関係に影響を与える。 Elkinsらの定義は、スピリチュアリティは宗教的活動として顕在化するのではなく、幅広い領域での生活経験に潜在的な影響を与えるもの、すなわち価値観(value)として捉えている。
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