現状の防止策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/06/12 20:12 UTC 版)
「科学における不正行為/del 20150613」の記事における「現状の防止策」の解説
科学の研究結果は、論文として発表される前にその分野の専門家による査読が行われ、研究の妥当性が問われるが、査読は「各研究者が倫理的行動をとること」を前提としているため、実験結果の捏造やデータの改竄、他人の研究の盗用などを発見する機能は果たしていない。 自然科学の世界では、不正行為の防止の機能も大いに期待しつつ実験ノートがとられてきた歴史がある。不正行為を働けないよう、実験ノートは「書く作法」が細かく決められていて、世界的に見て今でも原則的に手書きで、誰が書いたか筆跡で分かるように書くのが標準的な方法である。 筆記用具は、原則としてペンやボールペンなどインクを用いたものを用い、一旦書きこんだ内容を訂正する場合は、修正ペンなどで消してしまったりせず、(もともと書かれていた内容が判るように)二重打ち消し線を上に引く(そして、日本では訂正印を押す)。原則的にノートに空白は開けず、やむを得ずページを飛ばす場合は大きく斜線などを引き、飛ばしたページに後から書きこむことはできない形にする。いつ書かれた記述なのか細かく日付、時刻を書き込む。そしてノートの最も下の段に本人の署名(または押印)し、本人以外に記述内容を確認してもらったうえでその人の署名まで残す。 これだけIT化が進み、PCが普及しているにもかかわらず、今でも科学者らが実験ノートを原則的に「紙への手書き」としているのは、手書きは(きちんとした書法を守ると)改ざんしにくい、つまり不正防止の効果があると認められているためであり、さらに、科学者から見ると、正しい書き方を守った手書きの実験ノートを残していれば、何かの時に研究の不正を疑われた時に、自分が潔白であることを証明するための有力な(そして多くの場合、ほとんど唯一の)証拠、身を守るための道具となるからだ。 つまり、手書きの実験ノートは「不正行為を防止する機能」と(不正行為をやっていない場合は)「不正行為のないことを証明する機能」、それら二つの機能を同時に果たす、非常に重要なアイテムなのである。科学者から見ると実験ノートは、不正行為に関して「自分の身の潔白を証明」するための重要なアイテムであり、職業生命や人生がかかっているともいえる重要なアイテムなのである。論文内容などをきっかけにして不正行為の嫌疑が科学者にかけられ、いよいよ調査が始まると、多くの場合その科学者は実験ノートの提出を求められることになる。
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