王子と大亀の物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「王子と大亀の物語」の解説
ある国の王には長男シャテル・アリー、次男シャテル・フサイン、三男シャテル・ムハンマドという三人の王子がいた。結婚適齢期に達した三人の王子に妻を探すために王が思いついた方法は、目隠しをした王子たちに宮殿の高い窓から弓で矢を射させ、矢が落ちた家の娘を息子たちの妻とするというものだった。 アリー王子、フサイン王子の射た矢はそれぞれ大貴族の家に落ちたが、ムハンマド王子の射た矢は大きな亀が住んでいる家に落ちた。再度試みても同じ家に落ち、アッラーの御名を唱えてその恩寵にすがってから三度試みても同じ家に落ちた。王はムハンマド王子は独身のままでいるべきだという結論を出そうとしたが、ムハンマド王子は「三度とも大亀の家に矢が落ちたからには、私が大亀と結婚することは運命の書に記されている」と主張して、大亀と結婚することを求めた。王はこの求めを拒むことができず、鼻にもかかわらず(嫌々ながら)大亀との結婚を許可する。かくしてアリー王子とフサイン王子の婚礼の儀は王族と大貴族の娘の結婚にふさわしく盛大に執り行われるが、ムハンマド王子と大亀の婚礼の儀はごく一般的な平民の結婚程度のみすぼらしいもので、しかも誰も参列しなかった。 王は三人の婚礼のしばらく後、寄る年波に勝てず衰弱してしまう。王子たちは各々の妻の料理を献上して精をつけてもらおうと語り合い、王子たちの妻は腕に縒りを掛けて料理を作り始める。ムハンマド王子の妻は兄王子たちの妻に使いを出し、「鶏の糞」「鼠の糞」を料理の香り付けに使うから分けてほしいと頼むが「あんな大亀より私の方がうまく使える」と断られる。この策謀の結果、兄王子の妻たちは悪臭紛々たる料理を献上して王を激怒させてしまう。一方、ムハンマド王子の妻は美食の粋を凝らした見事な料理を献上し、王は旺盛な食欲でこれを平らげて元気を回復した。 王の快気祝いの宴が催されることになり、王子たちは妻同伴でこれに出席することとなった。ムハンマド王子の妻はまたも兄王子たちの妻に使いを出し、宴に出席する乗り物として「暴れ山羊」「駝鳥」を借りたいと頼むが「あんな大亀より私の方がうまく乗れる」と断られる。この策謀の結果、兄王子の妻たちは暴れる駝鳥と山羊にまたがり、御することもできずに散々な体たらくで王宮にやってくる羽目になった。一方ムハンマド王子の妻は大亀の甲羅を脱いで美しく着飾り、非の打ち所がない貴婦人の姿で、しとやかに歩いて王宮に入った。 ムハンマド王子の妻が宴席のバター飯と青豆のポタージュの器を自分の頭に向けて傾けたところ、髪の毛に触れたバター飯はおびただしい数の真珠に、ポタージュはおびただしい数のエメラルドに変わって床に落ち、並み居る人々を驚嘆させた。兄王子たちの妻もこれに張り合って頭にバター飯やポタージュを浴びせかけたが、飯粒まみれ・ポタージュまみれの無様な姿を晒してしまう。幾度となく失態を重ねたアリー王子・フサイン王子の妻は王の不興を買い、王位継承権を剥奪された夫共々追放された。 以後、唯一の王位継承権者となったムハンマド王子は、かつて大亀の姿をしていた妻(大亀の姿で居る必要がなくなったため、甲羅は燃やしてしまった)と、父王とともに幸福に暮らした。
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