王子とは何か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/28 03:10 UTC 版)
王子は参詣途上で儀礼を行う場所であった。主たる儀礼は奉幣と経供養(般若心経などを読経する)であり、神仏混淆的である。だが、よく言われるような熊野三山遥拝が行われた形跡は(少なくとも史料上では)確認できない。また、帰路にはほとんど顧みられることがないことから、物品の補給をおこなったとする説もあたらないと考えられている。これらの儀式が王子で行われたのは、王子とは熊野権現の御子神であるとの認識があり、すなわち参詣者の庇護が期待されたのである。 これら王子の形成は、中世熊野詣において先達をつとめた熊野の修験者によるものである。本来は沿道住人の祀る雑多な在地の神々である諸社を王子と認定したのは、熊野参詣を主導する先達たちである(ただし解釈は一貫せず、参詣記ごと・先達ごとのばらつきが相当ある)。また、王子という命名も、峯中修行者を守護する神仏は童子の姿をとるという修験道の思想に基づくものであると考えられる。同時に、熊野修験は院政期以降の皇族・貴人たちの参詣の先達をつとめたが、このことは、九十九王子の顕著な特徴である、紀伊路・中辺路への集中や院政期に重なる12世紀の大量出現をもたらしている。実際、最盛期に80余を数えた王子の大半は、皇族の参詣の活発化に伴って組織されたものである。
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