無性生殖の構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/10/28 09:00 UTC 版)
胞子形成部は、栄養体菌糸よりはるかに太いのが普通である。その基部はやや広がり、周囲に向けて仮根が出る。そこから上に向けて先細りの柄が伸び、柄の先端は急に膨らんで頂嚢となるのが普通である。ごく太くて短い柄を持つ種(S.nana、S.nodosaなど)もあるが、大部分のものは、直立する分節胞子嚢柄を持つ。短い柄をもつ種には宿主上に着生状に生じるものがあり、その場合、仮根は宿主の菌糸に抱き着くようになる。 柄は頂嚢の直下までは次第に細くなる。この柄は普通は分枝せず、まれに基部や中ほどで分枝する場合もあるが、不規則であり、エダカビのような規則的な分枝は見られない。 柄そのものに特徴が出るものもある。S.nodosa は柄にでこぼこがある。S.cornu は柄が大きく曲がって頂嚢が下を向く。 分節胞子嚢を生じる枝の様子は種によってさまざまである。多くのものでは分節胞子のう柄の先端が大きく膨らみ、これを頂嚢と呼んでいる。エダカビでは頂嚢が胞子の成熟後に脱落するものがあるが、ハリサシカビではそのようなことはない。頂嚢の上に分節胞子嚢がどのように配置するかは、種の重要な特徴である。 分節胞子嚢そのものは、単純な棒状のものが多いが、基部で枝分かれがある例もある。その部分も胞子として機能する。種によってはすべての胞子のうが分枝を持つ場合(S.nodosaなど)、頂のう上の位置によって異なる場合(S.penidillataなど)などがある。なお、このような分枝をもつ分節胞子のうの場合、その基部の部分をBasal cellと呼ぶ場合がある。その場合、分節胞子のうが枝を持つのではなく、Basal cellから複数の分節胞子のうを生じていると見なす。ただし、頂のう上に分節胞子のうの付着する部分が盛り上がっている場合も、これをBasal cellということがあり、この両者はBasal cellが胞子として機能するかどうかの違いと見なす立場もある。 また、先述のように頂のうから直接に分節胞子のうが出る場合が多いが、頂のう表面から明確な突起や柄を生じ、その上から分節胞子のうを生じる種もある。そのようなものをまとめて節を分ける考えもあったが、多くの合意を得てはいない。 分節胞子嚢は、初めは棒状の突起として形成され、その内部で核分裂が起き、複数の核が形成された後、その周囲の細胞質がまとまって胞子の形を取る。胞子が完成すると、胞子のうは胞子一つを含む形で節に分かれ、バラバラになって散布される。別の例では、胞子は基部のものの外形が完成した後、その先端から次の胞子が出芽するようにして形を成す。胞子はおおよそ円筒形だが、両端がくびれて楕円形になる例もある。いずれにせよ、その外面の胞子嚢壁と胞子の外面とは光学顕微鏡でも見分けられる。
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