潮騒 (1954年の映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/28 13:22 UTC 版)
潮騒 | |
---|---|
![]() | |
監督 | 谷口千吉 |
脚本 | 中村真一郎、谷口千吉 |
原作 | 三島由紀夫 |
製作 | 田中友幸 |
出演者 |
久保明、青山京子 三船敏郎、上田吉二郎 宮桂子、加東大介 東野英治郎、小杉義男 三戸部スエ、本間文子 沢村貞子、太刀川洋一 大前亘、宮桂子 高島稔、石井伊吉 赤生昇、山崎優 |
音楽 | 黛敏郎 |
撮影 | 完倉泰一 |
編集 | 笠間秀敏 |
配給 | 東宝 |
公開 |
![]() |
上映時間 | 96分 |
製作国 |
![]() |
言語 | 日本語 |
『潮騒』(しおさい)は、三島由紀夫の小説『潮騒』を原作に谷口千吉が監督した1954年10月20日公開の日本映画。配給は東宝。モノクロ、スタンダード。惹句は、「夢と冒険に生きる十代の裸像を恋で彩る海の抒情詩!」である[1][2]。原作者の三島がとても気に入っていた映画作品である[3][4]。昭和29年度のキネマ旬報ベストテンでは圏外の第19位で、『どぶ』と同位であった[5][6]。
概説
三島由紀夫の小説『潮騒』は複数回映画化されているが、初めて映画化された作品である。監督としてデビューして以来『ジャコ万と鉄』や『暁の脱走』などのアクション映画で注目を集めていた谷口が、新たな一面を見せた。公開当時は「性典もの」と呼ばれる過激な青春映画が流行していたが、そのような映画とは異なった作品に仕上がっている。伊勢湾の小島を舞台にした原作同様に撮影を神島で行い、三島の依頼を受けた文学者の中村真一郎が中心となって台詞を手がけたことで、原作の持つ「ロマンティシズムとリリシズム」が素朴に再現されている[7]。
三島はそれ以前に『純白の夜』の映画化で脚本を見せられた際、上流階級の敬語の言葉遣いなどがめちゃくちゃだったため、その部分を訂正してもらったが、出来上がった映画では手直し前に戻っており憤然とした経験があった[3][4]。そのため『潮騒』では、中村真一郎に協力を依頼し、脚本を担当してもらった[3][4]。なお、映画試写会には、当時の皇太子明仁も出席したという[8]。
ロケ現場には、原作者の三島も見学に行っていたが[9][10]、映画公開から7年後に三島は、〈この映画の成功の一つは、配役の成功であつたとも思はれる。久保明君も青山京子嬢も、実に素朴な可愛らしい主人公と女主人公になり切つてゐた。そしてどちらかといふと、都会風な繊細さのある久保君よりも、青山嬢のはうが、一そう適役であつた。このごろ彼女の健闘をきかないのは淋しいことである〉とも述べている[11]。
スタッフ
キャスト
- 久保新治:久保明
- 宮田初江:青山京子
- 歌島丸の船長:三船敏郎
- 宮田照吉:上田吉二郎
- 千代子:宮桂子
- 灯台長:加東大介
- 校長先生:東野英治郎
- 大山十吉:小杉義男
- 灯台長の妻:三戸部スエ
- お春婆さん:本間文子
- 久保とみ:沢村貞子
- 安夫:太刀川洋一
- 猛:大前亘
- 久保宏:高島稔
- 龍二:石井伊吉
- 宗太:赤生昇
- 勝ちゃん:山崎優
脚注
- ^ 「東宝映画『潮騒』ポスター」。写真は年表 1990, p. 98に掲載
- ^ 「さ行――潮騒」(なつかし 1989)
- ^ a b c 「私の原作映画」(週刊朝日別冊・特集 日本映画 1956年10月10日号)。映画論 1999, pp. 265–266、29巻 2003, pp. 302–303に所収
- ^ a b c 「第六章 原作映画の世界 『純白の夜』と『潮騒』――原作映画とシナリオ」(山内 2012, pp. 148–154)
- ^ 「昭和29年」(80回史 2007, pp. 70–75)
- ^ 「昭和29年」(85回史 2012, pp. 112–118)
- ^ センター 1983, p. 16
- ^ 三島由紀夫と川田雄基(学習院高等科在校生)とのインタビュー形式対談「三島由紀夫さんに聞く」(若人 1955年6月号)。39巻 2004, pp. 169–178に所収
- ^ 「『潮騒』ロケ随行記」(婦人公論 1954年11月号)。映画論 1999, pp. 258–264、28巻 2003, pp. 377–383に所収
- ^ ロケ地での出演者らとの記念写真はアルバム 1983, p. 35、年表 1990, p. 98に掲載
- ^ 「映画『潮騒』の想ひ出」(東宝映画 1961年10月号)。映画論 1999, pp. 277–279、31巻 2003, pp. 663–665に所収
参考文献
- 『決定版 三島由紀夫全集28巻 評論3』新潮社、2003年3月。ISBN 978-4106425684。
- 『決定版 三島由紀夫全集29巻 評論4』新潮社、2003年4月。ISBN 978-4106425691。
- 『決定版 三島由紀夫全集31巻 評論6』新潮社、2003年6月。ISBN 978-4106425714。
- 『決定版 三島由紀夫全集39巻 対談1』新潮社、2004年5月。ISBN 978-4106425790。
- 『決定版 三島由紀夫全集42巻 年譜・書誌』新潮社、2005年8月。ISBN 978-4106425820。
- 磯田光一 編『新潮日本文学アルバム20 三島由紀夫』新潮社、1983年12月。ISBN 978-4106206207。
- 井上隆史; 佐藤秀明; 松本徹 編『三島由紀夫事典』勉誠出版、2000年11月。ISBN 978-4585060185。
- 日高靖一ポスター提供『なつかしの日本映画ポスターコレクション――昭和黄金期日本映画のすべて』近代映画社〈デラックス近代映画〉、1989年5月。ISBN 978-4764870550。
- 松本徹『三島由紀夫――年表作家読本』河出書房新社、1990年4月。ISBN 978-4309700526。
- 山内由紀人; 平岡威一郎監修; 藤井浩明監修 編『三島由紀夫映画論集成』ワイズ出版、1999年12月。ISBN 978-4898300138。
- 山内由紀人『三島由紀夫 左手に映画』河出書房新社、2012年11月。ISBN 978-4309021447。
- 東京国立近代美術館フィルムセンター 編『日本映画史研究(2) 東宝映画50年のあゆみ(2)』東京国立近代美術館フィルムセンター、1983年。
- 『キネマ旬報ベスト・テン80回全史 1924-2006』キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2007年7月。ISBN 978-4873766560。
- 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2012年5月。ISBN 978-4873767550。
外部リンク
- 潮騒_(1954年の映画)のページへのリンク