漆の利用史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 09:07 UTC 版)
日本列島における漆の利用は縄文時代から開始され、土器の接着・装飾に使われているほか、木製品に漆を塗ったものや、クシなど装身具に塗ったものも出土している。漆製品は縄文早期から出土し、縄文時代を通じて出土事例が見られる。2000年に北海道函館市で実施された垣ノ島遺跡の調査で、出土した漆塗りの副葬品が約9000年前に作られたものであったことが明らかになった。これが現在、世界最古の漆塗り製品である。弥生時代の遺跡からは漆製品の出土は少なく、塗装技術も縄文段階と異なる簡略化されたものが多い。弥生時代からは武器への漆塗装が見られ、古墳時代には皮革製品や鉄製品などへの加工も行われている。古墳時代に至ると棺を漆で塗装した漆棺の存在も見られる。 古代には漆容器の蓋紙に廃棄文書を転用することが行われているが、漆の浸潤した廃棄文書は漆紙文書と呼ばれる。漆紙文書は土中においても遺存しやすくなり、木簡や墨書土器と並ぶ出土文字資料として注目されている。 奈良時代には漆製品も存在し、良質な漆液を用い手間をかけて製作した堅地漆器は貴重品として貴族階級が用い、一方で漆の使用量を減らし炭粉渋地(炭粉・柿渋を混ぜた下地)を用い大量生産された普及型漆器は庶民が用いたが、漆絵や蒔絵で装飾したものも見られる。 中世には林産資源のひとつとして漆の採取が行われており、甲斐国では守護武田氏が漆の納入を求めている文書が残され(永禄3年武田家朱印状「桑原家文書」『山梨県史』資料編4(県内文書)所載)、『甲陽軍鑑』では武田信玄が織田信長に漆を贈答した逸話が記されている。
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