滑走路の長さ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 06:02 UTC 版)
飛行機の運航に必要な滑走路の長さは、ただ単に「車輪が接地している間に走行する距離」だけでは足りない。必要とされる滑走路の長さとは、通常の離陸で滑走を始めた点から浮上して高度50フィート(大型機では高度35フィート)に達した瞬間の直下の点までである。 この離陸滑走路長にさらに15%の余裕を加えた距離、また多発機においては、離陸決心速度(V1) で離陸中止した場合に必要な停止距離、V1時点でエンジン1基が突然不作動となった場合に離陸を継続して高度35フィートに達するまでの距離、以上3つの中で一番長い距離を必要離陸滑走路長としている。 また、着陸においては滑走路端を高度50フィート(約15.2m)で通過して接地、減速、停止するまでを飛行機の着陸距離としている。着陸に使用するにはこの着陸距離の 1.67 倍の距離が必要着陸滑走路長とされている。 以上の必要離陸滑走路長と必要着陸滑走路長のうち長い方が、航空機の安全確保に必要な滑走路の長さである。現実には、その運航の時点での天候・滑走路の状態・滑走路の標高・飛行機の総重量などにより、必要滑走路長がその都度変化するのであり、必要滑走路長がその空港の滑走路長を逸脱しないように、搭載貨物量などを決めることになる。 目安として、本格的なプロペラ機の離陸に1000m、ジェット機の発着に最低1500m、ワイドボディ機の離陸に最低2000m、ボーイング747の離陸に最低2500mが必要である。同じ747でも燃料・旅客・貨物を多く積む長距離便(飛行距離が1万kmを超えるもの)で利用するには3,000m以上が必要である。大規模な国際空港では、ボーイング747やエアバスA380クラスの超大型旅客機の離着陸に余裕をもたせるため、3,000〜4,000mを確保するのが標準的である。世界で最も長い滑走路はエリア51の9,656m(別説あり)であるが、軍事基地であるが故に商業機が飛び交うことはない。商業利用で民間機が発着できる最長の滑走路は中国のチャムド・バンダ空港であり、5,500mの長さを有する。この空港は標高が4,334mと高い場所にある空港であるため空気の密度が低く、エンジンの推力、機体の揚力ともに減少し、滑走を始めてから離陸するまでに長い距離が必要なためである。平地の空港としてはアール・マクトゥーム国際空港(標高52m)が4,900mの長さを有する。 世界で最も幅の広い舗装滑走路があるのはロシアのウリヤノフスク・ヴォストーチヌイ空港であり、105mの幅がある。
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