海生の無脊椎動物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 14:06 UTC 版)
「白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の記事における「海生の無脊椎動物」の解説
K-Pg境界前後での海生無脊椎動物(英語版)の絶滅率は、参照する化石記録により大きく異なる。見かけの絶滅率は、実際の絶滅の影響よりも、むしろ化石が一様に残らず、まばらに発見されることの影響を受けていれる。 小型甲殻類の貝虫は、マーストリヒト期初期に繁栄し、各地に化石を残している。これらの化石の記録から、新生代で貝虫の多様性が最も低かったのは暁新世であることが分かっている。しかし、貝虫での大量絶滅がK-Pg境界で起きたのか、それより以前に起きたのかについては、現在でも明らかになっていない。 イシサンゴ目では、白亜紀後期に生息していた属のうち、およそ60%がK-Pg境界で絶滅した。詳細な分析によると、熱帯地域の浅瀬に生息していた造礁性サンゴはおよそ98%が絶滅している。一方で単体性サンゴは、有光層の下にある低温の深海域に生息し、K-Pg境界の前後でほとんど影響を受けなかった。造礁性サンゴは光合成をする藻類との共生関係に依存しているが、この関係はK-Pg境界によって壊滅的な被害を受けた。ただし、K-Pg境界の絶滅と新生代の回復については、サンゴの化石のデータをそのまま用いるだけでなく、サンゴの生態系に生じた変化とも比較検討を加える必要がある。 頭足類、棘皮動物、二枚貝については、K-Pg境界前後で属の数が大きく減少した。一方で、既に古生代に比べ小さな分類群となっていた腕足動物門では、ほとんどの種が生き延びただけでなく、暁新世初期に多様化を見せた。 軟体動物の頭足綱では、オウムガイに代表されるオウムガイ亜綱と、既にイカ、タコ、コウイカのなかまに分化していた鞘形亜綱を除いて全ての種がK-Pg境界で絶滅した。当時の頭足類としてはベレムナイトやアンモナイトといった殻をもつグループが繫栄しており、これらは非常に多様化していただけでなく、個体数も多く世界中に広く分布し、生態的に重要なグループであったが、すべてが絶滅した。研究者によれば、生存したオウムガイ亜綱では大きな卵を少数産むという繁殖戦略をとっており、大量絶滅を乗り切ってアンモナイトに取って代わる上で大きく役立ったという。一方、アンモナイトは、多数の卵を産んでプランクトン型の幼生を経るという戦略をとっており、これが理由で大きな被害を受けたとされる。さらに、地球上からアンモナイトが完全に絶滅した後、オウムガイ亜綱の多様化が始まり、殻の形状や複雑さの点でアンモナイトに匹敵する進化を遂げたことが示されている。 棘皮動物では、K-Pg境界の前後でおよそ35%の属が絶滅した。内訳としては、白亜紀後期に低緯度海域の浅瀬に繫栄した分類群で絶滅率が最も高く、中緯度海域の深海環境に生息するものでははるかに影響が小さかった。絶滅のパターンからは、生息地の喪失があったことが指摘されており、特に当時の浅瀬にあった炭酸塩プラットフォームが沈降した影響が大きかったと考えられている。 そのほかにも、厚歯二枚貝や巨大な二枚貝のイノセラムスが絶滅した。
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