浸透順応と浸透調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/23 16:14 UTC 版)
浸透圧調節の主要な2つのタイプは、浸透順応型 (osmoconformer) と浸透調節型 (osmoregulator) である。 浸透順応型は、体液の浸透圧と環境の浸透圧を能動的または受動的に一致させる。多くの海生の無脊椎動物は浸透順応型であるが、体液のイオン組成は必ずしも海水と一致しているとは限らない。 浸透調節型は、体液の浸透圧を緊密に調節することで体内環境を一定に保つ。動物界では、こちらの方法がより一般的である。浸透調節型は環境中の塩濃度に関わらず、能動的に塩濃度を一定に調節する。淡水魚はその一例である。淡水魚のえらは、ミトコンドリアに富む細胞を用いて環境から塩を能動輸送によって取り込む。水は体内へ浸透するため、淡水魚は余剰水分の排出のために非常に低張な(希薄な)尿を排泄する。一方、海水魚は体液の浸透圧が周囲の海水よりも低いため、水分を失い塩分が増加しやすい。そのため、多くの海水魚は水分の補給のために海水を飲み込み、えらから能動的に塩分を排出している。魚類のほとんどは狭塩性(英語版)であり、その生息域は海水または淡水に制限されており、適応している塩濃度と異なる環境では生存することができない。しかしながら、いくつかの魚は、広範囲の塩濃度に対して効率的に浸透圧を調節する驚くべき能力を示している。このような能力を持つヒラメなどの魚は広塩性(英語版)の種として知られている。ヒラメは、海水と淡水という全く異なる2つの環境に生息することが観察されており、行動的・生理的変化によって適応する性質を持っている。 サメのようないくつかの海水魚は、水分を保持するために異なる効率的なメカニズムを採っている。サメは、血中に比較的高濃度の尿素を含んでいる。尿素は生体組織に損傷を与えるので、この問題に対処するためにいくつかの魚ではトリメチルアミン-N-オキシドを利用している。サメは、わずかに(海水の溶質濃度 1000 mOsm/L よりも)高い溶質濃度を持つため、他の海水魚のように海水を飲むことはない。
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