津波の発生モデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:07 UTC 版)
「東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム」の記事における「津波の発生モデル」の解説
Mw9.0という超巨大地震が海底を震源域として発生したら、必然的に巨大な津波が発生する。東北地方太平洋沖地震の地震波から解析した断層すべりモデルと、GPS、海底地殻変動など測地学的な分析による断層すべりモデルは比較的良く一致している。もし津波地震のような地震であったならば、測地学的な断層すべりモデルが地震波を解析したモデルよりも有意に大きなすべりを示すものと考えられ、このことから東北地方太平洋沖地震は津波地震ではなく、基本的には普通の地震であったと見られている。 岩手県釜石市の沖合いに設置されている海底水圧計で、海岸線に到達する前の津波が観測された。まず海岸から約70キロ、水深約1600メートルの場所にある海底水圧計TM1では、2011年3月11日の14時46分 (JST) の地震発生後、約5-6分の間に約2メートルの海面上昇が確認された。これは津波の第一波であった。続いて14時58分から約二分という短い時間に更に3.5メートルの急速な海面上昇が確認された。これが津波の第二波であった。TM1に続いて海岸から約40キロ、水深約1000メートルの海底水圧計TM2でも、TM1から約5分遅れで同様の海面上昇が確認された。津波は外洋から沿岸へ向かうにつれて波高を増す性質があり、海岸から70キロの時点で5メートルを越す津波は沿岸でその数倍の高さにまで増幅され、沿岸部に甚大な被害をもたらすことになった。 東北地方太平洋沖地震による断層すべりモデルと、海底水圧計、波浪計、験潮所などで観測された津波のデータから、プレート境界のやや深い部分のすべりによって発生した津波がゆるやかに海面が上昇をした第一波で、比較的長周期の波長を持った津波であり、続く短時間で海面が急上昇した第二波は、日本海溝付近の浅い部分が大きくすべったことによって発生した津波で、短周期かつ振幅の大きな津波であったと考えられた。またプレート境界のやや深い部分のすべりによる第一波は、波長が長いゆるやかな海面変化を引き起こし、仙台平野や石巻平野のような平野部を数キロに渡って浸水させた津波となり、これは9世紀に仙台平野や石巻平野を広範囲に水没させた貞観地震による津波による津波に類似しており、短周期で高い波高を持った第二波は、1896年の明治三陸地震による津波のように、三陸沿岸に高いところで30メートルを越える極めて波高の高い津波となって押し寄せた。つまり東北地方太平洋沖地震では、波長が長くゆるやかな水位上昇で平野部奥深くまで浸水させた貞観地震タイプの津波と、短い波長で急速かつ高い海面上昇をもたらす明治三陸地震津波の両方の性質を持った津波が発生し、三陸海岸ばかりではなく、仙台平野など平野部でも甚大な被害をもたらした津波となった。
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