法医学への応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 18:10 UTC 版)
「ポリメラーゼ連鎖反応」の記事における「法医学への応用」の解説
PCRベースのDNA型鑑定(フィンガープリンティング)は、法医学分野で広く応用されている。 DNA型鑑定は、世界中の全人口から一人を一意に区別することができる技術である。この技術を応用し、微量のDNAサンプルを犯罪現場から採取して分析し、囚人のDNAデータベースから比較することで、容疑者を特定できる場合がある。より簡易な利用方法としては、犯罪捜査中に容疑者を迅速に除外するために利用される。あるいはまた、数十年前もの前の犯罪証拠品をテストすることで、有罪判決を受けた人々の犯行を確認したり、あるいは免罪することにも繋がる。 法医学におけるDNAタイピング(フォレンジックDNAタイピング)は、犯罪現場で発見された証拠の分析から犯罪容疑者を特定または除外する効果的な方法である。ヒトゲノムには、遺伝子配列内またはゲノムの非コード領域に見られる多くの反復領域がある。具体的には、ヒトDNAの最大40%が反復的であることが知られている。ゲノム内のこれらの反復非コード領域には2種類あり、一つは可変長タンデムリピート(VNTR)と呼ばれ、10〜100塩基対の長さである一方で、他方はショートタンデムリピート(STR)と呼ばれ、2〜10塩基対の繰り返しセクションで構成されます。そして、各反復領域に隣接するプライマーを使用してPCR増幅をかけることができる。各個人から取得したいくつかのSTRのフラグメントのサイズの分布を調べると、統計的に高い確率で、各個人を一意に特定することができる。さらに、ヒトゲノムの完全配列はすでに決定されており、この配列情報はNCBI Webサイトから簡単にアクセスできるため、様々な応用がなされている。たとえばFBIでは識別に使用するDNAマーカーサイトのセットを編集しており、これらは結合DNAインデックスシステム(CODIS)DNAデータベースと呼ばれている。このデータベースを使用すると、DNAサンプルが一致する確率を統計的に決定できる。分析に使用するターゲットDNAの量が非常に少なくて済むため、PCRはフォレンジックDNAタイピングに使用する非常に強力で重要な分析ツールである。たとえば、毛包が付着した人間の髪には、1本もあれば分析を行うのに十分なDNAが含まれている。同様に、数個の精子、指の爪の下からの皮膚サンプル、または少量の血液は、決定的な分析に十分なDNAを提供できる。 一方で逆に、識別力の低い形式によるDNAフィンガープリンティングは、親子鑑定に活用されている。この場合、身元不明の人間の遺体といった対象者は予想される近親者、すなわち親や兄弟、子供等のDNAと比較される。養子になった(誘拐された)子供の生物学的な両親を確認するためや、新生児の実際の生物学的父親の確認 (または除外)などにも利用される。 アメロゲニン遺伝子を対象としたPCRでは、法医学的な骨サンプルからリアルタイムで男女の性決定をする事ができる。これにより、古代標本や犯罪容疑者の性別を判別することができる。
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