氷の収支
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/04 06:24 UTC 版)
「海面上昇」も参照 その位置ゆえ、南極大陸が受ける太陽照射は比較的少ない。そのため、気温が非常に低く、水はほとんど氷の状態で存在する。少ない降水は雪として降り注ぎ、夏に溶けないフィンと呼ばれる分は蓄積され、巨大な氷床を形成して陸を覆う。その一部は氷河流を呼ばれる大陸沿岸へ向かう、年間数-数十mから沿岸部では数百mの動きを持つ。その先では、大陸上の氷の塊が押し出されて棚氷を形成する。沖合に至っても気温は低いままであり、海水も凍りつかせて氷は年間を通してほぼ維持される。このような多様な南極の氷が、海洋面の高さへの影響を与えたり、地球温暖化へ関連する。 海洋部の氷は毎年冬に拡大し、夏にはほとんどが溶ける。この氷は海洋水から形成されるため、浮いている状態では海洋面の高さを左右しない。南極大陸を囲む氷は、その厚みの変化は明確ではないが、範囲はここ数十年においてさほどの変化を見せていない。 浮いている氷は影響を与えないが、棚氷を形成する陸上から移動した氷は地球全体の海面上昇を引き起こす。これは内陸に降る雪で相殺されるものだが、この数十年間は沿岸部、特に南極半島に沿った部分で発生した大規模な棚氷の崩壊が報告されている。このような棚氷の分断が、大陸の氷河から供給される水の量を増加させる可能性が懸念される。 大陸上の氷そのものが、世界中の淡水の70%を占める。これは降雪によって増加し、海への流出によって減少する。現在、西南極では流出量が降雪を上回り、徐々に海面上昇を引き起こしている。1992年から2006年までの科学的調査によれば、氷は1年当たり約500億トンが失われ、海面は約0.14mm上昇していると示唆された。アムンゼン海への氷河流出は大幅に加速しており、この数値は倍以上になっているという説もある。 東南極は大陸の大部分を占める広大かつ標高が高く、寒冷な領域である。ここは、結果的に氷床を沿岸へ押し出す役目をする降雪が少ない。そのため東南極氷床全体の質量収支は、ほぼ均衡またはわずかに増加(海洋面水位にとっては低下)していると考えられる。しかし、局地的には流出が増加している箇所も発見されている。 南極における氷の収支項目質量(収)雪が蓄積する量 2000 ×109トン (支)氷山が分裂して溶解する量 1200-1500 ×109トン (支)氷床や棚氷の底が溶解する量 200-3000 ×109トン (支)氷床の表面から蒸発や融解する量 10 ×109トン
※この「氷の収支」の解説は、「南極大陸」の解説の一部です。
「氷の収支」を含む「南極大陸」の記事については、「南極大陸」の概要を参照ください。
- 氷の収支のページへのリンク