水不足と環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 07:31 UTC 版)
海河の流域面積は32万平方km近くであるが水量は少なく、年間水量は黄河の半分、長江の30分の1に過ぎず、年々水不足が深刻化している。 1970年代以後、海河の上流にある都市では急速な工業化・都市化により取水量が増加し、上水道建設のため支流に多数の中小のダムが建設された。また大型ダムも次々と建設されている。たとえば北京に水を供給する密雲ダム・官庁ダム・十三陵ダム、保定市に水を供給する西大洋ダム・王快ダム、石家荘市の水源となる黄壁荘ダム・崗南ダム、邢台市の水源となる朱荘ダム、邯鄲市の水源となる岳城ダム、安陽市林県に水を供給する紅旗渠などがあげられる。 こうした取水量増加や、上流での砂漠化・雨量減少により、海河の流量は急速に減少している。小さな支流の多くや一部の大きな支流では年間のほとんどの期間は水が流れていない。流量の減少により河川の汚染も深刻になっている。華北平原では地下水を汲んで農業用水を確保しているが、汲み上げ過ぎて地下水位も下がっている。 水不足解決のため、1982年には華北平原の第二の大河である灤河の水を天津へ引水する計画「引灤入津工程」が開始された。1983年に竣工したこの用水路により天津には毎年10億立方mの水が供給され水不足は部分的に解消した。また河口の閘門を閉じることにより、引水した地点から河口までの間は大きなダムのような状態になった。しかし、海河と灤河の河口では渤海へ川の水を放流するだけで海水が遡上しなくなったため、汽水域の生態系や漁業に大きな打撃となった。かつて天津の三叉河口あたりでは「金眼銀魚」と呼ばれる銀魚が獲れ、また天津郊外の勝芳ではカニ(螃蟹)が多く、太湖や陽澄湖など長江デルタの豊かな水域にも匹敵する品質の高い水産物が有名であったが、どれも現在では姿を見なくなってしまった。 海河の支流では干上がった川が多く、猛烈な都市化が進むなかで水不足は華北の発展の足を引っ張る問題になっている。南水北調プロジェクトでは、長江水系の水を海河流域へも回すことで問題の緩和を目指している。
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