気前のよい掌の老人の物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「気前のよい掌の老人の物語」の解説
老人の名はハサンと言い、バグダードの貧しい縄作りであった。ある日、裕福なシ・サアードとシ・サアーディが、金持ちになるためには元手が必要なのか、元手がなくてもアッラーの思し召しにより金持ちになったり貧乏になったりするのかを議論しながら歩いて来て、ハサンを目にして、ハサンに金を渡し、それを元手に金持ちになるかどうかを実験してみようということになり、シ・サアードはハサンに200ディナールを渡した。 ハサンは、生まれて初めて大金を手にして、盗まれては大変と、10ディナールを手元に残し、残り190ディナールをターバンの中に隠したが、鳶が飛んできて、ターバンを掠め取って行ってしまった。ハサンに残った10ディナールは瞬く間に生活費に消えてなくなり、10ヵ月後、シ・サアードとシ・サアーディが様子を見に来た時は、ハサンは貧しいままであった。 シ・サアードは事情を聞き、もう一度ハサンに200ディナールを与えて実験してみることになった。ハサンは10ディナールを手元に残し、残り190ディナールを布に包み糠の入った甕に隠したが、事情を知らない妻が甕を行商人の髪洗い用粘土と物々交換してしまった。甕がなくなったことを知ったハサンは妻を責めたが、逆に「なぜ隠したことを言わなかったのか」と妻に散々愚痴を言われることになっただけであった。ハサンに残った10ディナールは瞬く間に生活費に消えてなくなり、10ヵ月後、シ・サアードとシ・サアーディが様子を見に来た時は、ハサンは再び貧しいままであった。 今度は、シ・サアーディが、ハサンに、道で拾った何の価値もない鉛の玉を与え、様子をみることになった。その晩、隣の漁師の奥さんが来て、漁師の網の錘が一つなくなり困っているが、代わりに使えるような物を持っていないか聞いて来たので、ハサンは鉛の玉を渡した。すると、翌朝、漁師は最初の一網で取れた大きな魚を鉛の玉のお礼として持ってきた。ハサンの妻が魚を裁くと、魚の腹からガラス玉が出てきた。その玉は夜の暗闇でも光を放つ玉であった。 すると、近所に住む宝石商のユダヤ人の妻が来て、10ディナールで売って欲しいと言ってきた。ハサンが断ると、ユダヤ人宝石商本人が買いたいと言ってきた。ハサンが断ると、ユダヤ人宝石商は値をつり上げ、ついに10万ディナールで売買が成立した。ユダヤ人宝石商は玉を買った後で、これはスライマーン・ブニ・ダーウドの王冠の宝石の一つだと言った。 ハサンは、得た10万ディナールの大金はアッラーの贈り物であり、アッラーの意に沿うよう人々のために使おうと考え、貧しい縄作りたちの生活を安定させるために、縄を一定の価格で無制限に買い上げることにし、縄作り組合で発表した。おかげで縄作りたちの生活は安定したが、それ以上にハサンは買い上げた大量の縄を市場で売ることで利益を上げた。こうしてハサンは大金持ちになった。そこへシ・サアードとシ・サアーディがハサンの様子を見にやって来て、ハサンのあまりの変わり様に大変驚いた。そこに、子供たちが鳶の巣を取って遊んでいたが、よく見るとそれはハサンのターバンであり、中から190ディナールが出てきた。さらに、ハサンの家の奴隷がその日市場で買った甕が、以前ハサンが失った甕で、中から布に包まれた190ディナールが出てきた。こうして、シ・サアードとシ・サアーディとハサンは、金持ちになるのも金を失うのもアッラーの意のままであることに納得した。こうしてハサン老人は、得た金を貧しい人々に使い続けたのであった。 この話を聞いたとき、教王(カリーファ)ハールーン・アル・ラシードは、宝蔵からスライマーンの宝石を持って来させて一同に見せ、スライマーンの宝石はユダヤ人宝石商が入手したその日のうちに、教王の宝蔵に入ったことを一同に伝えた。
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