残侠編
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 00:06 UTC 版)
大正14年、深川で落ち目の昔気質のヤクザ、青木一家を預かる青木金十、あだなは小金は、馬方専業の運送屋上がりの新興勢力の丈徳とふとしたことから争いになる。横浜から女を連れて流れてきた飛車角は、小金への一食の恩義で助っ人で参加する。飛車角の愛人、おとよは、身売りされたところを飛車角がかっさらって、一緒に逃げ出してきたものだったが、その騒動のさなかに行方不明。飛車角が、あてにしていた奈良平が裏切って、おとよを売り払ったらしい。激昂した飛車角は、奈良平を刺し、追手を避け、逃げ込んだところが、青成瓢吉の住まい。瓢吉は留守で、ちょうど訪ねてきた吉良常に出くわす。その後、瓢吉が帰宅、吉良常は旧交を温める。夜中に、迷惑になるのを避け、青成の家から逃げ出した飛車角は、本門寺の森で、逃亡中の共産党の横井安太と出会う。飛車角と横井は服を取り替え、飛車角は川崎の遊郭そばの舎弟、安のねぐらを訪ね、安の女房からおとよの消息を教えられる。丈徳も奈良平も死んだとのことで、飛車角は自首する。彼は、七年の実刑で市ヶ谷の刑務所に送られる。横浜、本牧のユキホテルに戻るはずだったおとよは、玉ノ井裏の売春窟に身を落とす。そこで知り合ったお袖は、今ではお蝶と名乗っている。瓢吉は、日本正論社と文壇を二分する再建社の谷水社長から支那に行ってみることを勧められる。上海で瓢吉は予期せず吉良常と再会し、深夜、黄浦江の川船の上で故郷、三州横須賀の近況を聞く。 飛車角が世話になっていた青木一家は、小金がいよいよ体が動かなくなり、組のことは山兼が仕切っている。ところがその弟分の宮川が、玉ノ井に通っている内に、知り合って惚れてしまっのが、おとよ。飛車角の女だと知って、山兼に打ち明ける。飛車角はその間に市ヶ谷から前橋の刑務所に移された。飛車角が7年の刑期を終えて出所してくると、出迎えたのは吉良常だった。この7年の間に、小金の一家がすっかり落ちぶれて、デカ虎が残党を集め、勢力を盛り返し、寺兼と白鉄も袋叩きにされ、一家はわずか3、4人にまでになったこと。宮川がおとよを連れて出奔してしまったことなど聞かされる。動揺する飛車角に、吉良常は実は宮川に会ってほしいと、待たせてあるんだと自分の住まいに連れて行く。宮川が、おとよとのことで飛車角に謝ったあと3人で飲もうということになり、宮川が酒を買いに行く。しかし、彼は酒屋には行かず、そのまま砂町の太陽シネマに行き、デカ虎を斬りつける。宮川は現場から逃走するが、警察に捕まり、20日間の勾留ののち、本庁に回されるというところで、警察から逃げ出し、吉良常のもとにやってくる。飛車角と吉良常は宮川をなんとか救ってやる算段をする。海北ホテルの一室、瓢吉のもとに夏村が名古屋の選挙区から、代議士の選挙に打って出るので、応援の依頼にやってくる。夏村の選挙の応援演説のため名古屋に向かう列車の中で、瓢吉は石上乱月と再会する。彼も応援演説に向かうところだった。占拠には旧友の吹岡も駆けつけていた。選挙運動を終えて、宿屋に戻った瓢吉のもとに、飛車角が吉良常の容態が急を告げているとの知らせを持ってやってくる。瓢吉は急遽、飛車角と横須賀村に向かう。吉良常は観月ホテルにいる。夏村が選挙で当選したとの知らせに気分も高揚する中、瓢吉とお袖に見守られて吉良常は息を引き取る。通夜の準備が進む中、おとよが飛車角を探して会いに来る。飛車角はおとよへの思いが、断ち切れず、探しに行くと入れ違いに出発したところだった。
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