標識_(言語学)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 標識_(言語学)の意味・解説 

標識 (言語学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 00:35 UTC 版)

言語学における標識(ひょうしき)またはマーカー英語: marker)とは、に付いたりそれらを変更したりすることによって文法的機能を示すものをいう。

概要

一般には形態素であり、単独で現れる自由形態素も、また接尾辞のような束縛形態素もあるが、アクセント語順なども標識になり得る。孤立語膠着語の標識は、単独の意味を持ち、見分けやすいことが多いが、屈折語抱合語では、標識が元になる語と融合したり、複数の意味を合わせ持つ標識があったりする。

日本語では、格助詞はを表す格標識である。例えば「が」は主格、「を」は対格を示す。助詞「は」は文の話題を表す主題標識である。接続助詞「と」(「~という」など)は補文標識、終助詞「か」は疑問文であることを表す標識である。いずれもその直前にある語や文に関しての文法機能を表す。尻上がりの発音で疑問文にする場合は、この発音が疑問文の標識となる。

ラテン語(屈折語)の動詞 amo(私は愛する)では、接尾辞 -o が直説法・能動態・一人称・単数・現在時制という多数の文法カテゴリーが複合した機能を表す。同様に英語の動詞に付く -s は、直説法・能動態・三人称・単数・現在時制を表す。このように、単純に分析できない標識もある。

英語ではこの他、名詞に付く -s は複数を表す標識であり、文頭の there は存在文の標識であり、that節を導く that は補文標識である。

有標と無標

ある文法機能が、特定の標識で示されるなら有標 (marked) と呼び、標識を用いないで示されるなら無標 (unmarked) と呼ぶ。例えば日本語の「食べる」と「食べない」では、後者には否定の標識「ない」が付いているが、前者に肯定の標識があるわけではない。このため前者は無標、後者は有標である。格標識に関しては、対格言語では主格が、また能格言語では絶対格が無標のことが多い。

一方、有標とは特殊と考えられるものであり、無標とは基本的ないし自然と考えられるものとすることもある。この概念を有標性英語版(markedness)という。例えば英語のlionは雄雌どちらのライオンも表すが、lionessは雌だけである。前者が無標で後者が有標である。こちらの意味で「有標」「無標」を用いる場合、標識の有無と一致しないことがある。例えばロシア語の女性名詞複数生格(属格)は標識無しで表されるが、複数主格や単数生格に比べて自然なわけではない。

有標・無標の概念は元々はプラハ学派(プラーグ学派)の音韻論から発展してきた概念である。音韻論や文法だけでなく語彙論意味論などの分野にも適用されている。

関連項目


「標識 (言語学)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「標識_(言語学)」の関連用語

標識_(言語学)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



標識_(言語学)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの標識 (言語学) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS