有標と無標
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/16 01:28 UTC 版)
ある文法機能が、特定の標識で示されるなら有標 (marked) と呼び、標識を用いないで示されるなら無標 (unmarked) と呼ぶ。例えば日本語の「食べる」と「食べない」では、後者には否定の標識「ない」が付いているが、前者に肯定の標識があるわけではない。このため前者は無標、後者は有標である。格標識に関しては、対格言語では主格が、また能格言語では絶対格が無標のことが多い。 一方、有標とは特殊と考えられるものであり、無標とは基本的ないし自然と考えられるものとすることもある。この概念を有標性(英語版)(markedness)という。例えば英語のlionは雄雌どちらのライオンも表すが、lionessは雌だけである。前者が無標で後者が有標である。こちらの意味で「有標」「無標」を用いる場合、標識の有無と一致しないことがある。例えばロシア語の女性名詞複数生格(属格)は標識無しで表されるが、複数主格や単数生格に比べて自然なわけではない。 有標・無標の概念は元々はプラハ学派(プラーグ学派)の音韻論から発展してきた概念である。音韻論や文法だけでなく語彙論、意味論などの分野にも適用されている。
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