東武80000系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/15 09:15 UTC 版)
東武80000系電車 | |
---|---|
![]() |
|
基本情報 | |
運用者 | 東武鉄道 |
製造所 | 近畿車輛 |
製造年 | 2024年 - |
製造数 | 25編成107両(予定)[1] |
改造所 | 近畿車輛[# 1] 津覇車輌工業[# 1] |
改造年 | 2025年 -[# 1] |
運用開始 | 2025年3月8日[2][3] |
投入先 | 野田線 |
主要諸元 | |
編成 | 5両編成 |
軌間 | 1,067 mm(狭軌) |
車体長 | 20,470 mm(先頭車) 20,000 mm(中間車)[4] |
車体幅 | 2,800 mm |
動力伝達方式 | WN継手式[4] |
主電動機 | 三相同期リラクタンスモータ[1] |
駆動方式 | 中実軸平行カルダン方式[4] |
編成出力 | 2000 kw[5] |
制御方式 | フルSiC素子適用MOSFET-VVVFインバーター |
制御装置 | フルSiC素子適用2レベル方式電圧型PWMインバータ(電力回生ブレーキ付定速運転機能付)[4] |
備考 |
東武80000系電車(とうぶ80000けいでんしゃ)は、2025年(令和7年)3月8日から営業運転を開始した東武鉄道の通勤型電車[6]。
概要
野田線(東武アーバンパークライン)の8000系および10030系の置き換え用として、「子育て世代のご家族の皆様が快適にご利用いただける車両構造」をコンセプトに新たに設計された[1]。更なる環境への配慮や省メンテナンス・省エネルギー化(電気使用量は代替対象の8000系と比べて約40%以上削減)[1]、バリアフリーの推進や安全性・快適性の向上を図っている[3]。
東武野田線車両の5両編成化により、5両編成で製造される[3]。また、サステナビリティの観点から、25編成のうち18編成は4両を新造し、1両を60000系からサハ64600を脱車して改造・改番したサハ83500(サハ83550)を組み込んで5両編成を構成する80050型となる[1]。
車両概説
車体
車体長は先頭車20,470mm・中間車20,000mm[4]。幅は2,800mmで、素材は東武鉄道の一般型車両では50000系以降で標準となっているアルミ製[7]。ただし、同じ野田線の車両である60000系(50000系と同じ日立製作所製)と異なり、本系列は東武単独の設計の車両としては初の近畿車輛製となった[7][注釈 1]。
客用扉は片側4箇所・両開き方式で、幅は1,300mm[4]。
-
側面行先表示機
-
乗降確認用カメラ
内装
車内のテーマは「リビング」で「ただいまって言いたくなる車内」を目指し、落ち着いた空間を表現したデザインとなった[9]。60000系とは床面や座席モケットの色が変わり、乗務員室後ろの壁に装飾が入った。
本編成では、子供向け空間をイメージ、家族連れをターゲットにした優先席・『たのしーと』を全編成の4号車に設置する[1][10]。ベビーカーを置いてその真横に座れる配置になっている[9]。なお、『たのしーと』は東武鉄道の登録商標(特許第6793095号)[11]である。側面扉上部には17.5インチの2画面LCD表示器が千鳥配置されており、さらにセキュリティ向上のため側面扉上部には防犯カメラも設置されている[12]。また、乗務員室と客室の仕切窓は大きく取られ、仕切扉の窓は下辺方向に拡大して手すり[注釈 2]を設置することで、子供でも仕切扉と同様に下辺方向に拡大した非常扉の窓からの前面展望が見やすくなる(親が抱きかかえなくても子供だけで車窓を楽しめる)配慮がなされている[7][3][9]。
-
車内
-
優先席
-
4号車「たのしーと」
-
車椅子スペース(T2車両)
-
車内案内表示器
乗務員室
運転台は、東武の新型の通勤形電車としては初めて左手操作式のワンハンドルマスコンが採用された[13]。計器類は圧力計を除き、LCD2画面式に統一された。主に左側には速度計などが、右側には乗車率・車内温度・運転速度などがリアルタイムで表示される[13]。将来(2026年度以降実施予定)のワンマン運転を想定し、乗降用ドアの開閉ボタンや、マイクや運転台の上にモニターが設けられている。このほか、1両の乗降用ドア4つのうち、3つを締め切る装置、車外ブザーなどを設けている[13]。
-
運転台
主要機器
主電動機
主電動機として民間鉄道初の同期リラクタンスモータを採用した車両推進システムSynTRACSを搭載する[注釈 3]。このほか、リチウムイオン電池SCiBとSIV装置を組み合わせた車上バッテリーシステムを搭載する[1]。
制御装置
制御装置にはフルSiC素子適用のVVVFインバーターを採用。
補助電源装置
補助電源装置として、3レベルIGBT式SIV装置を設置。AC440V・60Hz・200kVA、ESシステムによりSIV故障時のCP動作用電源(440V)供給に対応する。
空気圧縮機
電動空気圧縮機として、オイルレススクロール式を1編成につき1台(3台内蔵)設置する。出力性能1分当たり1,155Nlの消音器付除湿装置、除湿装置用暖房器がついている。
施設状態モニタリングシステム「みまモニ」

2024年度に新製された5編成のうち、第4・第5編成(81504F・81505F)に限り、架線モニタリングシステム、架線検測、レールボンドモニタリング、軌道変位モニタリング、軌道材料モニタリング、地上子検測など施設の状態を監視できるカメラや検測装置などを搭載し、通常運行を行いながらも鉄道施設の状態を常時検測、またカメラ、センサーなどデジタル技術を活用し高頻度の施設検査を行うことで、安全性の向上を図る線路施設モニタリングシステム(通称・『みまモニ』)をサハ83500に搭載している[4] [注釈 4]。
運用

(左から81501F・81502F・81503F)
製造〜輸送
全編成とも、徳庵の近畿車輛で製造された後、第1・第2編成(81501F・81502F)は2編成まとめて、2024年12月24日発送で栗橋駅まで甲種輸送[14]、その後南栗橋車両管区まで輸送された。その後、第3編成(81503F)は単独で、第4・第5編成(81504F・81505F)は2編成まとめて甲種輸送された。
南栗橋到着後〜試運転
南栗橋車両管区に到着後は、試運転が行われた。しばらくは深夜の時間帯での試運転だったが、2025年1月28日からは日中にも日光線などで試運転が行われ初め、2025年2月9日からは野田線の(七光台〜)春日部〜岩槻で試運転が開始された[15][16]。
営業運転開始
2025年3月8日に団体臨時列車としてデビューし、2025年3月9日に一般列車での営業運転を開始した[10]。
編成
編成は5両編成(Tc-M-T-M-Tc)であり[13]、MT比は2M3T。電動車比率が低くなっている[1][4]。
2024年度に製造された5編成のうち、第4・第5編成(81504F・81505F)においては、前述の通り線路施設モニタリングシステム(『みまモニ』)をサハ83500に搭載している[4]。
編成表
← 柏
大宮・船橋 →
|
|||||
号車 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
---|---|---|---|---|---|
形式 | クハ81500 (Tc1) |
< モハ82500 (M1) |
サハ83500 ([* 1]) |
< モハ84500 (M2) |
クハ85500 (Tc2) |
搭載機器 | CONT,SIV,CP | MON[4] | CONT,SIV,CP | ||
車両番号 | 81501 : 81503 |
82501 : 82503 |
83501 : 83503 |
84501 : 84503 |
85501 : 85503 |
81504 81505 |
82504 82505 |
83504 83505 |
84504 84505 |
85504 85505 |
|
自重 | 29.5t | 36.3t | [* 2] | 36.7t | 29.7t |
定員 | 133人 | 143人 | [* 3] | 144人 | 133人 |
備考 | 「たのしーと」設置車[10] |
- 凡例
- CONT:制御装置
- SIV:補助電源装置(静止形インバータ)
- CP:電動空気圧縮機
- MON:各種モニタリング装置
- 網掛け(■):線路施設モニタリングシステム『みまモニ』搭載車両(T2)
- 備考
- ^ MON(施設モニタリングシステム)非搭載の車両は「T1」、MON搭載の車両は「T2」、60000系からの流用車両は「T3」となる[4]。
- ^ T1は26.3t、T2は30.0t、T3は24.7tとなる。
- ^ T1は144人、T2は142人、T3は146人となる。
脚注
注釈
- ^ 東武の車両では、日比谷線直通用の70000系も近畿車輛製だが[8]、これは東京メトロとの共同設計。
- ^ 手すりの形は四角形で、上側は9歳、下側は2歳の子どもの身長に対応した高さになっている[7]。
- ^ 民間鉄道以外では、福岡市交通局4000系が先に同期リラクタンスモータを搭載して登場している。
- ^ 81505Fは予備編成
出典
- ^ a b c d e f g h 『省エネ・CO2削減による環境負荷低減と快適性・サービス向上を両立します 2025年から東武アーバンパークラインに5両編成の新型車両80000系を導入します ~環境にやさしく、沿線の皆さまに愛される車両を目指します~』(PDF)(プレスリリース)東武鉄道、2024年4月16日。オリジナルの2025年2月7日時点におけるアーカイブ 。2025年2月10日閲覧。
- ^ 「新型80000系お披露目 東武野田線10年ぶり、3月から営業運行開始 子ども部屋イメージ「たのしーと」も」『千葉日報』千葉日報社、2025年2月10日。オリジナルの2025年2月10日時点におけるアーカイブ。2025年2月10日閲覧。
- ^ a b c d 「野田線新型車両、きょうから運行 東武鉄道」『日本経済新聞 地方経済面 東京』2025年3月8日、朝刊5面。
- ^ “東武一般車の「伝統」が消滅!? 80000系が崩した「比率」と、それを実現した「新しい床下機器」とは”. Yahoo!ニュース (2025年3月1日). 2025年3月4日閲覧。
- ^ 鉄道ファン編集部「新車速報 東武鉄道80000系」『鉄道ファン』第65巻第5号、交友社、2025年5月1日、38-40頁。
- ^ a b c d “先進機器を採用、ワンマン運転対応も! 東武の新型「80000系」を詳しく見る”. 鉄道コム (2025年2月11日). 2025年2月12日閲覧。
- ^ 『東武鉄道株式会社殿東武スカイツリーライン新型車両(東京メトロ日比谷線相互直通運転車両)の製作者に決定しました』(プレスリリース)近畿車輛、2015年6月17日。オリジナルの2020年3月22日時点におけるアーカイブ 。2025年2月12日閲覧。
- ^ a b c 「東武野田線、「80000系」運行開始 ベビーカーとも座りやすく(千葉支局 丹田拡志)」『日経MJ』2025年3月19日、5面。
- ^ a b c “【速報版リポート】東武80000系が報道公開 野田線5両化の第一陣は3月8日にデビュー予定”. 鉄道コム (2025年2月10日). 2025年2月10日閲覧。
- ^ “特許出願・登録情報表示”. https://www.inpit.go.jp/. 独立行政法人工業所有権情報. 2025年1月23日閲覧。
- ^ “【東武】3月8日デビューの80000系の全貌が明らかに!新設備「たのしーと」の様子は?”. 鉄道ホビダス (2025年2月10日). 2025年2月26日閲覧。
- ^ a b c d “東武鉄道80000系-人と地球によりそう電車-”. ちばとぴ (2025年2月24日). 2025年2月25日閲覧。
- ^ “東武80000系が甲種輸送される”. railf.jp. 交友社 (2024年12月25日). 2025年2月25日閲覧。
- ^ “東武80000系が東武日光線内で試運転を実施”. railf.jp. 交友社 (2025年2月1日). 2025年2月25日閲覧。
- ^ “東武野田線 80000系 試運転/2025年2月14日(金)”. www.tetsudo.com. 2025年2月25日閲覧。
関連項目
- 東武60000系電車 - 本系列の一部編成に中間車が組み込まれている。
- 東武野田線 - 本系列が導入された路線。
- 東武80000系電車のページへのリンク