東映の娯楽版
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この時に攻勢に出たのが東映であった。1954年には各社とも二本立て体制をとり始めたが、まだこの時期は新作で完全長編二本立てではなく、試行錯誤の時期であった。東映は1951年創立の後発会社でこの時期は松竹・大映についで業界3位であった。興行側が強く二本立てを望んでいることで、そこで東映は本編(フューチャー)1本に「東映娯楽版」という活劇でしかも三部作として売り出し、月形龍之介・大友柳太朗主演の「真田十勇士」、他に「謎の黄金島」「少年姿三四郎」などをおよそ40~50分前後で、本編に付けて上映して、しかも三部構成の連続物なので次回もその続きを見るために観客を呼び込むなどして、この娯楽版には「雪之丞変化」も東千代之介主演の三部作として製作した。そしてこの娯楽版から「笛吹童子」の三部作が製作されて、第1部「どくろの旗」45分、第2部「妖術の闘争」44分、第3部「満月城の凱歌」57分がそれぞれヒットして主演の中村錦之助を一躍スターに押し上げた。翌年正月には「紅孔雀」五部作が公開されて、本編の片岡千恵蔵の多羅尾伴内シリーズ「隼の魔王」よりも人気を呼んだ。 この娯楽版の狙いは、三部構成にすれば全体は120分を超す長編物であり、内容において本編と変わらない当時の実質A級映画であったことである。そしてまだデビューしたばかりの若手俳優を使い、しかもここから東千代之介、中村錦之助、大友柳太朗などその後の東映時代劇を支えるスターが育っていった。この少し後には連続物でなく独立した映画も製作して、当時デビューしたばかりの高倉健が「電光空手打ち」「流星空手打ち」などの1時間足らずの作品で主演を演じている。この東映娯楽版が松竹SPと違って、本編の添え物ではなく、実質は観客を映画館に引き寄せる力になったことで、東映は東映作品だけを上映する契約館を増やし、やがて東映が映画業界のトップに躍り出ることになった。
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