本白根山とは? わかりやすく解説

もとしらね‐さん【本白根山】

読み方:もとしらねさん

群馬県北西部にある火山標高2171メートル南麓はかつて硫黄(いおう)の産地としても知られた。鞍部となる逢(あい)ノ峰(みね)を隔てて白根山草津白根)の南側位置し三山あるいは白根山との二山で「白根山」「草津白根」ともよばれる

[補説] 有史以来噴火記録はなかったが、平成30年20181月23日噴火起こし死者1名を含む人的被害発生した水蒸気噴火とみられ、顕著な前兆現象はなかった。


本白根山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/17 06:27 UTC 版)

本白根山
本白根山を南東から望む。白根山側は写っていない。
標高 2,171 m
所在地 日本
群馬県吾妻郡草津町・同郡嬬恋村
位置 北緯36度37分23秒 東経138度31分54秒 / 北緯36.62306度 東経138.53167度 / 36.62306; 138.53167座標: 北緯36度37分23秒 東経138度31分54秒 / 北緯36.62306度 東経138.53167度 / 36.62306; 138.53167
山系 草津白根山
本白根山の位置
プロジェクト 山
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本白根山(もとしらねさん)は、群馬県吾妻郡草津町嬬恋村にまたがる標高2,171mの火山である。

地理

草津町内にある白根山を含む草津白根山の主峰で、逢ノ峰を挟んだ南側に位置する。約1500-5000年前に噴火活動があり、山頂付近には5つの大きな噴火口が形成されている[1][リンク切れ]。噴火口は南北に並んでおり、古本白根火砕丘、新本白根火砕丘、鏡池火砕丘、鏡池北火砕丘の順に、南から北へ順に噴火したと推定されている[2]。それら火口を周遊するハイキングコースが整備され、夏にはリンドウシャクナゲが見られるほか、コマクサ自生地があることでも知られる。山腹には草津国際スキー場ゲレンデが広がる。

草津白根山の地形図
南側が本白根山の火砕丘群
2018年の
火口 (A)
鏡池北火砕丘
鏡池火砕丘
本白根火砕丘(古・新)
(B)
本白根山
最高地点
(C)
本白根山鏡池周辺の航空写真。なお、2018年の火口位置や数は今後の調査によって増減する可能性がある。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成

火山活動

本白根山では約3000年前に溶岩流を伴う噴火があったことが知られている[3]。鏡池北火砕丘では約1500年前まで噴火が起きていたと推定されている[2]1976年8月3日、登山中の高崎女子高の生徒が山頂北西側のガレ沢で硫化水素を吸い込み倒れ[4]、3人が死亡する事故があったが、近年は2018年まで目立った活動が見られなかった。

2018年1月23日10時2分頃、本白根山の鏡池の北側、白根火山ロープウェイ山頂駅の南側で噴火が発生した。噴火したのは、鏡池北火砕丘の北側の縁に東西に並ぶ複数の新たな火口(火口列。右または上の航空写真中A)と、鏡池北火砕丘から谷を挟んだ西側の火口(同B)、それに鏡池火口内の新たな火口列(同C)である[5][6][7]。このうち西側の火口(同B)はスキー場のリフトから約100メートルの位置にあった[8][9]

本白根山では噴火3分前の9時59分から火山性微動が発生し、10時0分頃から約2分間の隆起とその後の沈降が傾斜計で観測された[5]。しかしそれ以前には火山活動を示すデータは観測されておらず、前兆のない突然の噴火だった[10]。噴火は水蒸気爆発とみられるが、高温の火山ガスも関与していたと考えられる[5]。噴出物の量は約4万トンと推計されており、2014年の御嶽山噴火の10分の1程度にあたる[11][12]

気象庁はそれまで白根山の湯釜付近を中心に監視していたが、鏡池付近には監視カメラを置いていなかった[13]。噴火の10分後には、草津町役場や、草津白根山を常時監視している東京工業大学から噴煙の目撃情報が寄せられた。しかし草津白根山全体を映している気象庁の監視カメラでは、天候不良で噴煙を確認できなかったため、噴火速報を発表できなかった[14]。気象庁は噴火から1時間以上経った11時5分に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に引き上げ、噴石火口から1km以上に渡って飛散したため11時50分にはレベル3(入山規制、警戒範囲2km)に引き上げた[15]

この噴火で、草津国際スキー場に多数の噴石が落下し、スキー場で訓練中だった自衛隊員のうち1人が部下を守り、噴石にあたって殉職した[1][リンク切れ][16][注釈 1]。また白根火山ロープウェイのゴンドラに噴石が当たって窓ガラスが割れ、乗客が負傷するなど、自衛隊員7人を含む計11人が負傷[1][リンク切れ][16]。当初は雪崩が発生したと報じられたが、雪崩ではなく噴石による負傷と訂正された[16]。またロープウェイの山頂駅も被害を受けた[1][リンク切れ]。この隊員は陸曹長より3等陸尉に特別昇任となった。

この噴火を受け、気象庁は2018年3月16日から、それまで草津白根山全体を対象にしていた噴火警戒レベルを、本白根山と白根山(湯釜付近)とで分けて発表することにし、同時に本白根山の噴火警戒レベルはレベル3からレベル2(警戒範囲1km)に引き下げられた[18][19]

2019年4月5日、本白根山はレベル1に引き下げられた[20]。なお、噴火後、白根火山ロープウェイは廃止された[21]

火山防災体制

気象庁は「草津白根山」として一体的に噴火警戒レベルを発表していたが、2018年の噴火後、3月から本白根山と白根山に分けて発表する運用に変更した[21]。2019年には草津白根山防災会議協議会でハザードマップや避難計画が初めて策定された[21]

画像解説

脚注

注釈

  1. ^ 死亡した自衛隊員は後輩をかばっていた[17]
  2. ^ 冬期に表土が凍結と融解を繰り返すことで礫と細粒部分の分別が起きることで形成される構造だと考えられている[22]

出典

  1. ^ a b c d 草津白根噴火、複数火口か…1メートルの噴石も 読売オンライン 2018年1月24日 15時26分
  2. ^ a b 草津白根火山本白根火砕丘群の完新世の噴火履歴 日本地球惑星科学連合2016年大会、2016年5月22日。
  3. ^ 火山別噴火履歴表示 産業技術総合研究所地質調査総合センター、2018年2月1日閲覧。
  4. ^ 登山の女高生、集団ガス中毒 噴気の硫化水素を吸う 2人死亡し2人重体『朝日新聞』1976年8月3日夕刊、3版、7面
  5. ^ a b c 火山噴火予知連絡会拡大幹事会:草津白根山の火山活動に関する見解について草津白根山の火山活動に関する火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解(参考資料)火山噴火予知連絡会拡大幹事会(本会議資料抜粋)気象庁、2018年1月26日。
  6. ^ 第140回火山噴火予知連絡会 -全国の火山活動評価等について-第 140 回火山噴火予知連絡会 草津白根山の火山活動に関する検討結果(別紙1)気象庁、2018年2月14日。
  7. ^ 2018年1月23日 草津白根山(本白根)噴火東京大学地震研究所、2018年2月1日閲覧。
  8. ^ 噴火は新たな「火口列」=「半年から1年は警戒」-草津白根山・気象庁予知連”. 時事ドットコム. 2018年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月23日閲覧。
  9. ^ 朝日新聞2018年1月25日朝刊社会面。
  10. ^ 朝日新聞2018年1月24日朝刊総合2面。
  11. ^ 火山灰や噴石など約4万トン 気象庁、山ごとの警報も検討産経ニュース、2018年2月6日。
  12. ^ 草津白根山、噴出物4万トン”. 朝日新聞デジタル. 2018年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月23日閲覧。
  13. ^ 本白根山、最近の火山活動なし=噴火速報発表できず-気象庁”. 時事ドットコム. 2018年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月23日閲覧。
  14. ^ 噴火速報、気象庁が運用改善へ 「目撃情報」で発表日本経済新聞、2018年1月31日。
  15. ^ 草津白根山の噴火警戒レベルを3へ引上げ』(PDF)(プレスリリース)気象庁、2018年1月23日https://www.jma.go.jp/jma/press/1801/23a/kusatu-shiranesan180123.pdf2018年1月23日閲覧 
  16. ^ a b c 朝日新聞2018年1月24日朝刊1面。
  17. ^ 草津白根山噴火:犠牲の陸曹長、隊員かばい背に噴石 友人悲痛「伊沢さんらしい」”. 毎日新聞. 2022年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月23日閲覧。
  18. ^ 草津白根山(本白根山)を対象とする噴火警戒レベルを新たに設定し、3月16日14時より運用を開始します気象庁、2018年3月15日。
  19. ^ 噴火警報(火口周辺)(草津白根山)平成30年3月16日14時00分気象庁、2018年3月16日。
  20. ^ 本白根山の警戒レベル1 気象庁、新燃岳も”. 日本経済新聞. 2023年6月21日閲覧。
  21. ^ a b c 犠牲者の鎮魂の祈り 本白根山噴火3年 草津温泉スキー場で献花”. 上毛新聞ニュース. 2018年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月23日閲覧。
  22. ^ 上木賢太, 寺田暁彦、「草津白根火山の巡検案内書」 『火山』2012年 57巻 4号 p.235-251, doi:10.18940/kazan.57.4_235

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