日本語訳の取り組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 18:06 UTC 版)
「インフォームド・コンセント」の記事における「日本語訳の取り組み」の解説
インフォームド・コンセントは、1990年に日本医師会が公表した「『説明と同意』についての報告」において「説明と同意」という語で表現され、アメリカ合衆国のシステムを参考に日本国独自のものとしてまとめられた。これがインフォームド・コンセントの最も有名な和訳とされている。その他、「説明、納得、同意」などの日本語もあてられてきた。 しかし、ここで日本医師会生命倫理懇談会が「説明と同意」という語で表現したのは、日本国とアメリカ合衆国ではインフォームド・コンセントの概念が異なるからである。日本医師会の常任理事は「説明と同意」と「インフォームド・コンセント」は概念が異なるため「インフォームド・コンセント」という言葉を入れてはいけないと発言している。医療制度や国民性の差異によって、インフォームド・コンセント法理の発展には相違がある。 訴訟社会であるアメリカ合衆国では、医療過誤が弁護士の餌食となっており、本来の意義とは異なり、インフォームド・コンセントは裁判に訴えられないための防波堤としての場合もある。このような医療不信や訴訟の増加は、大きな社会的費用となりうる。 1993年、厚生省は『インフォームド・コンセントのあり方に関する検討会』を設置し、インフォームド・コンセントの法制化は、医療従事者と患者の信頼関係を損なう恐れがあるとして否定的な見解を出し、用語については強い訳語を作らないで「インフォームド・コンセント」と片仮名で表記する内容の報告書を提出した。インフォームド・コンセントは「患者が医療者に行うものであって、医療者はインフォームド・コンセントを受ける側である」ため、日本語に翻訳するとしっくりせず、インフォームド・コンセントとしてそのまま使用されている。 これに対し日本弁護士連合会は、2011年10月6日第54回人権擁護大会の声明において、「我が国には、このような基本的人権である患者の権利を定めた法律がない」「日本医師会生命倫理懇談会による1990年の『説明と同意』についての報告も、こうした流れを受けたものではあるが、『説明と同意』という訳語は、インフォームド・コンセントの理念を正しく伝えず、むしろ従来型のパターナリズムを温存させるものである」と批判した。 一方、医師と患者のなれ合いが、インフォームド・コンセントを積極的に推し進める場合の障害になっていることは否定できない。そこで「日本的インフォームド・コンセント」が必要だと言われることとなる。なお、2003年4月に国立国語研究所の外来語委員会が「説明と同意」に加えて「納得診療」という表現を提案しているが、「納得診療」という表現は、日本語として根付いていない。
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