日本語訳への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 16:29 UTC 版)
ラーベの日記の日本語訳である『南京の真実』(講談社、1997年、のち講談社文庫、2000年)について、日独平和フォーラムベルリン代表の一人である梶村太一郎は、多数の誤訳や内容の改竄・捏造について指摘し、「原書とは似ても似つかぬ通俗な“歴史読物”になってしまっている」として批判している。 梶村は、日本語訳本の帯にヴィッケルトの言葉として引用された「南京のシンドラー」という表現について、ヴィッケルト自身は「ラーベは“南京のシンドラー”ではない」と原著に書いているのに、「なぜか原書と正反対にされている」と指摘したうえで、さらに原著における「ラーベは“南京のシンドラー”ではない」という文章が翻訳では「抄訳」という形で削除されている、と指摘している。 平野の訳では、この本の276頁、ラーベと『ラーベの日記』自体についてのヴィッケルトの解説として、「一九九六年十二月、彼の日記が公表されたとき、『ニューヨーク・タイムズ』はラーベを「南京のオスカー・シンドラー」と称えた」と訳され、それに続いて共通点を挙げた記述の後、「オスカー・シンドラーの場合は、どこまで商業上の利益がからんでいたのか、判然としないところがあった。だがジョン・ラーベの動機は間違いなく純粋だ」と訳されている。 さらに、訳書を校閲・解説した横山宏章による「『中国のシンドラー』と呼ばれるのも当然」という発言に対して、「なぜ姑息な隠蔽で原書と異なる人物像を宣伝するのか」「もし映画で有名なシンドラーにあやかる商業主義によるのであれば、学者として恥ずかしくはないのだろうか?」として批判した。 ほか、同訳書には、ユダヤ人、日本軍関係について原著にはない表現が加筆されたりしており、原書の持つ史料としての価値は「完全に失われ」ているとして批判した。
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