日本における信仰と造像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 14:10 UTC 版)
ヒンズー教におけるサラスヴァティーは川の名前であったものが女神となったもので、手に本や数珠、縄、ヴィーナ(琵琶)、水瓶などを持ち、叡智や学問、音楽の神とされるが、漢訳経典『 金光明最勝王艇』巻第七「大弁才天女品第十五」では、弁才天は「金光明最勝王経」の護法神として登場し、眷属(従者)を率いて天の伎楽を行なって金光明最勝王経を擁護し、諸病苦等を除く役割を果たすとある。 弁才天の陀羅尼を誦せば所願が成就し、財を求めれば多くの財を得られるともあり、これがのちに弁才天が福徳の仏とみなされる根拠となり、川辺に居住するとあったことから、川や湖、池などに祀られるようになった。また、8本の手に弓・箭・刀・矟(さく)・斧・長杵・鉄輪・羅索といった武器を持つとあることから戦闘神としての機能もあり、これは日本の『別尊雑記』(12世紀心覚による図像集)や『白宝抄』(鎌倉時代の天台系図像集)にも描かれ、これが宇賀神と習合した竹生島の八臀(8本腕)の弁才天坐像や江島神社の八臀の木造弁才天坐像などに繋がる。 8世紀の僧一行による『大日経疏』(大日経の解説書)では、サラスヴァティーのことを妙音楽天とも弁才天とも言う、とあり、これをうけて、鎌倉時代初期の曼荼羅転写本『胎蔵旧図様』(胎蔵曼荼羅図)や『現図曼荼羅』(両界曼荼羅図)では2本の手で琵琶を弾く二腎像として描かれている。 日本ではこれらの経典に基づいて、8本腕の戦闘神的な弁才天と、2本腕の琵琶を持つ弁才天とが形作られ、互いに影響関係を持ちながら変容し、鎌倉時代に宇賀神との習合によって大きな変化を遂げていった。
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