施条砲と滑腔砲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 03:22 UTC 版)
左:砲腔内の施条溝を追従するよう、周囲にリベットを設けたライット・システムの砲弾図解 右:戊辰戦争で使用された四斤山砲の砲弾。ライット・システムである 施条砲に対してライフリングの施されていない銃砲を滑腔銃(砲)と呼び、火縄銃・散弾銃・迫撃砲(ただし、全てが滑腔砲ではない)などがその例である。つまり、現代では拳銃やほとんどの重火器はすべてライフリングの施された「ライフル」ガンであり、その中で小銃のみを「ライフル」と呼ぶのは本来奇妙なことと言える。これは、ライフリングが普及した19世紀後半に、施条銃をライフルと呼んでそれ以前の、滑腔銃であるマスケット銃から区別したことに由来する。 前装式の大砲は、ミニエー弾の様なプリチェット式の砲弾をそのまま使う訳にも行かず、ライフリング開発後も長らく球形弾を飛ばす滑腔砲であったが、長弾の弾頭にリベットを付け、施条と噛み合わせて旋転するライット・システムが19世紀に開発された。リベットの頭とポリゴナルライフリングの溝のあいだに大きな隙間があったため、現代の施条砲に比較すればガスが漏れやすく、発射の際のエネルギーロスは大きかったが、施条によって射距離を伸張し、長距離をより正確に砲撃することが可能になった。だが、砲口からの砲弾装填の面倒さもあって滑腔砲を駆逐するには至らず、完全に施条砲が普及するのは、アームストロング砲を初めとした後装砲が実用化された19世紀末頃になる。 20世紀になると砲の大半は施条砲となったが、冷戦期にこの流れが変わった。それまでは戦車の主砲(戦車砲)にも施条砲が用いられていたが、ライフリング回転の不要な(むしろライフリングが威力を落とすことになる)HEAT弾やAPFSDS弾が主流となった1970年代以降に開発された戦車においては主砲に滑腔砲が採用されるようになった。例外的に、2016年現在においてイギリス軍最新の主力戦車・チャレンジャー2は120mm ライフル砲を装備している。同砲専用砲弾の生産停止や他国との互換性の問題から滑腔砲への換装が検討されていたが予算不足により中止された。
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