新即物主義と写真
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/04 16:10 UTC 版)
新即物主義の写真への影響は、ドイツにおいて、1920年代後半に現われ始める。具体的な例としてあげられる写真集としては、アルベルト・レンガー=パッチュの『世界は美しい』(Die Welt ist Schön, 1928年)やカール・ブロスフェルトの『芸術の原型』(Urformen der Kunst, 1928年)がある。前者は工場や機械を中心に、人や動物も含めた様々なものを、後者は植物のみを、技術的実験性のない、冷静な、非人間的とも言えるまなざしで撮影した作品群である。その意味で、単純な伝統的リアリズムではなく、新即物主義的な視線・色彩を強く持っている。なお、クローズアップや水平線・垂直線の強調などの構成主義的な言語も用いられている。また、このような、冷静な冷めた視線で、人物をとらえた写真家としては、アウグスト・ザンダーが挙げられる(1929年の写真集『時代の顔』 Antlitz der Zeit)。 さらに、機械美学という面に目を向ければ、他にも、フランスのジェルメーヌ・クルルの『メタル』(Métal, 1927年)なども、その例として挙げられるであろう。 これらの作品傾向が、モホリ=ナジらのバウハウスの実験的・前衛的な写真と一緒になり、ノイエ・フォト(ドイツ新興写真)へとまとまっていく。 日本では、新即物主義の写真への影響は、新興写真の一部として、1930年ごろに展開し始め、報道写真、前衛写真等の様々な分野の写真作品へと浸透していった(新興写真の項を参照)。一例としては、田中長徳が土門拳の作品を(戦後になって)論じる時に用いた。 写真における新即物主義の影響は、表現的な面がほとんどで、政治性や社会風刺といった(ジョージ・グロスなどにある)思想的な面があまり見られない、という特徴がある。
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