新たに導入された工法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 13:05 UTC 版)
「中山トンネル (上越新幹線)」の記事における「新たに導入された工法」の解説
今回の中山トンネル工事では日本で初めて、新オーストリアトンネル工法 (NATM) が導入された。これは巨大な膨圧に対応するために導入された一手法であったが、その成功にトンネル技術者からの注目が集まった。さらに同時期に、オーストリアでNATMの視察をして帰国した日本国有鉄道(国鉄)の技術者が、多くのトンネルでNATMによる施工に切り替えを断行したこともあり、NATMの採用が広がっていった。当初は慣れない吹付コンクリートの作業に手間取り、工期が長引いて工費が高騰するとの反対もあったが、慣れるにつれて作業が1か所に集中して管理しやすいことや作業員を減らせること、落石による事故を防げること、そして工費も低減できることがわかってきた。 本格導入から10年も経たない1987年度(昭和62年度)、土木学会はトンネル標準示方書を改定し、NATMをトンネル工事の標準工法と定め、従来の鋼製支保工を用いた工法を特殊工法とした。中山トンネルでのNATM施工は、それまで個別作業員の能力に頼ることの多かったトンネル掘削を初めて工学と呼べる水準に引き上げ、その後の日本のトンネル工学の発展に大きく寄与した。 薬液を注入する工法についても、中山トンネルが大きな役割を果たした。注入工法は古くから地質の悪いところを改良する方法として使われてきたが、信頼性のある手法とは言えなかった。中山トンネルの厳しい条件下で失敗を繰り返しながら注入剤と注入方法の改良が進められ、初めて信頼性のある工法として定着することになった。有機廃液によるバクテリア発生の問題を解決するために、実験段階であった新しい注入剤を試行し、これは後のトンネル工事において広く使われるようになった。中山トンネル以降では、注入工法はトンネル工事だけではなく地盤改良などにも多用される技術となった。
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