散開星団 NGC 2264
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 06:35 UTC 版)
「COROT」の記事における「散開星団 NGC 2264」の解説
2008年3月に行われた23日間にわたる観測で、COROT は若い散開星団 NGC 2264(英語版) にある 636 個の天体を観測した。クリスマスツリー星団と呼ばれるこの星団はいっかくじゅう座の領域にあり、およそ 1,800 光年と比較的近距離にある。この星団の年齢は300万〜800万年と推定されている。若い星団であるため、星形成や初期の恒星進化に関連した様々な科学的疑問点を調査するには理想的な観測対象である。COROT の観測データにより、この星団での新しく形成された恒星とその周囲の物質の相互作用、星団の一員の自転や活動とその分布、星震学を用いた若い恒星の内部構造、惑星や恒星の食に関する研究が可能となった。 若い恒星はそれらを形成する元となった濃い分子雲の奥深くに位置しているため、恒星の誕生やその後の若い段階は可視光線ではほとんど観測することができない。赤外線やX線の観測では分子雲の奥を見通すことができるため、恒星進化における最初期の段階の情報を得ることができる。そのため、2011年12月と2012年1月の COROT の観測は、4つの宇宙望遠鏡といくつかの地上望遠鏡が参加した大きな国際観測キャンペーンの一環として行われた。全ての機器を用い、若い星団 NGC 2264 にあるおよそ 4,000 個の恒星が異なる波長でおよそ1ヶ月にわたって同時に観測された。カナダの人工衛星 MOST は星団内の最も明るい恒星を可視光で観測し、COROT はより暗い恒星を観測した。MOST と COROT はこの星団を 39 日間にわたって継続的に観測した。NASA のスピッツァー宇宙望遠鏡とチャンドラは、同じ恒星を赤外線とX線で、それぞれ30日と300キロ秒ずつ測定した。地上望遠鏡での観測も同時に行われ、チリにあるヨーロッパ南天天文台のVLT、ハワイのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡、テキサス州のマクドナルド天文台、スペインのカラーアルト天文台などで観測が行われた。 COROT の観測では、脈動する多数の前主系列星のたて座デルタ型変光星の発見や、前主系列星におけるかじき座ガンマ型変光星の存在の確認が行われた。また両方の変光タイプが混合した脈動を起こしている天体も発見された。また、この恒星の集団の中では最初に発見され、よく知られた前主系列段階の脈動星である、いっかくじゅう座V588星やいっかくじゅう座V589星も観測された。COROT で得られた高精度の光度曲線の情報からは、前主系列星における粒状斑の重要な役割も明らかになった。 COROT のデータを元にしたおうし座T型星とそれらの周囲に有る物質との相互作用の研究からは、新しい天体の分類であるおうし座AA型星の存在が明らかになった。COROT による観測以前は、おうし座T型星は恒星表面の黒点によって引き起こされる正弦波状の光度変化と、若い恒星を取り囲むガスと塵の円盤によって引き起こされる完全に不規則な変動を示すことが知られていた。おうし座AA型星の天体は振幅と幅が異なる周期的な減光を起こすため、半規則型変光星にあたる。COROT の観測によって、この新しい型の変光星の存在が確立した。また、可視光での変光と赤外線やX線での変光との比較からも、恒星進化の最初期における様々な知見が得られている。
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