政治と社会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/24 00:32 UTC 版)
『氷と炎の歌』は、トールキン的な剣と魔法の物語というよりも、マキャベリ的な政治的陰謀を中心にした物語だと書くメディアもある。ウェスタロスと、薔薇戦争当時のイングランドとの類似性が指摘されている。すなわち、一つの玉座が国土を統一するが、玉座に誰が座るかをめぐって有力な諸名家が争う。真の王が不在なまま、国土には、自らの評判にしか関心を持たない、腐敗した貴族だけが残る。ゆるやかな同盟のもと、貧しくとも名誉を重んじる北部が狡猾な南部と戦う。どちらが勝とうが、庶民は苦しまなければならない。登場人物は、現代のように国家単位ではなく、中世のように街単位や血縁単位によって同盟を結ぶ。王は神の化身であると見られるため、王権の正統性は極めて重要である。マーティンは、正しくある事が常に優れた指導者の条件ではないこと、また指導者の決断がどのような結果を生み出すのかを描こうと望む。 中世では、人は自分の社会階層の義務と特権を身につけるよう躾けられる。本シリーズは、そのような中世の社会構造から来る社会的な摩擦を反映する。英雄よりは政治についての物語であり、栄光を求めるというよりは卑近な妄想のために必死にもがく人間像を描いている。善と悪との戦いではなく、封建社会の抑圧に由来する権力争いがここにはある。マーティンの強みは、大きな政治の物語を陰で動かす人間の物語を的確に把握するところである。王から盗人まで、マーティンはウェスタロス中のあらゆる魂の中を洞察している。これは賭け金のつり上がった世界であり、勝者は栄えるが敗者は無慈悲に踏みにじられる。登場人物は、この歴史の織物に逆らって、親しきものへの愛を選ぶのか、あるいは名誉、義務そして国土への関心を選ぶのかを決めなくてはならない。たいていの場合、高潔な選択をした者は自らの命でその代償を支払わねばならない。
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