政治と否認論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 01:31 UTC 版)
ホロコースト否認は学術的な見解に反するのみならず、ヴィダル=ナケが「ドイツ・ナショナリズム、ネオナチズム、反共産主義、反シオニズム、反ユダヤ主義」が否認論の背景にあると分析しているように、ネオナチ等のナチズム再興を標榜する極右派の主要なイデオロギーとなっている。一方で左派出身者にも否定論者は存在する。否認論者は左派であることが反ユダヤ主義者や人種主義者ではない証明であるとして、その「左派」さえ「否認論」を支持しているのだというかたちで「否認論」の正当性を主張しているが、反ユダヤ主義を「右翼」のみに帰するのは余りに単純な図式化である。また、大虐殺そのものは明確に立証されており、歴史学者の間で議論になっていない。このため主要なヨーロッパ諸国や、欧州連合の機関においては、公共空間におけるホロコースト否認は、単なる歴史研究ではなく、政治的な意図を持った「扇動」として扱われる(ただし、虐殺の原因、経緯、および犠牲者数には研究者の間で議論があり、それらの学術研究は法的に禁止されていない)。これは、否認論者がしばしば口にする「真理の探究」という口実の裏に、「ユダヤ人による歴史の偽造に対する非難」と「ナチ体制の名誉回復」という真の目的および結果があるという見解によるものである。ただし、犯罪としている国においても、出版などの言論において公共空間に表明することが違法とされており、ホロコースト否認のための研究そのものが法的に禁止されているという事実は無い。 一方で、ドイツと交戦した国でも、イギリスやアメリカにおいては比較的寛容に扱われている。また戦後の中東問題で、イスラエルによる行為を非難する立場から、しばしば否認論が肯定的に取り扱われている。ロジェ・ガロディがフランスにおいてホロコースト否認による人種差別教唆罪に問われた際にも、欧州人権裁判所に対して「シオニズムとイスラエル政府を批判しただけ」と主張したが、「彼の主張はこの範囲にとどまらず」「実際には明白な人種主義的な目的を持っている」として却下された事例もあるように、否認論者側がイスラエルとシオニズム批判を否認論と結びつけることもある。
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